2011 Fiscal Year Annual Research Report
ノッチシグナルを標的とした悪性中皮腫に対する分子標的治療
Project/Area Number |
22700912
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢満田 慎介 東北大学, 加齢医学研究所, 非常勤講師 (80571447)
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Keywords | 悪性中皮腫 / Notch シグナル / Delta-like 4 / SCID マウス / 細胞周期 / アポトーシス |
Research Abstract |
去年度まで,Delta-like 4の中和抗体のヒト悪性中皮腫皮下モデルマウスの癌成長への影響を検討した.介入後の各群(γ-secretase inhibitorの投与群とDelta-like 4中和抗体の投与群)の体重,癌サイズにより計算された)及び癌の重さは対照群に比べ,(癌サイズを除き)有意な変化が見られなかった.今回の実験はNotchシグナル阻害剤であるγ-secretase inhibitorをpositive controlとして実験系に入れたため,Delta-like 4シグナルが直接に癌成長への抑制効果がないと考えられる.今年度ではもっと臨床に近いモデル(胸腔モデル)を作成し,γ-secretase inhibitorとDelta-like 4中和抗体はモデルマウスの生存率に対する影響も検討した. まず,胸腔モデルを作成するために,胸腔の中で成長できる細胞の種類の検討を行なった.それから,どれぐらいの細胞を投与すればいいかを検討した.結果として,6種類の細胞の中に1種類だけSCIDマウス胸腔の中で生長できることを確認した.更に10^5 cells/マウス,10^6 cells/マウス及び10^7 cells/マウスの3細胞濃度でSCIDマウスに投与したところ(5匹/群),別々の生存期間の中央値(範囲)は40日(35-50日),29日(25-33日)と20日(13-29日)であった.臨床では悪性中皮腫の生存期間がきわめて短いことから,10^7 cells/マウスの細胞投与量がAICAR投与の試験に使われた.マウスの胸腔に悪性中皮腫細胞を注入し,5日後から,1kg体重あたり5mgのγ-secretase inhibitorと100mgのDelta-like 4の中和抗体の腹内投与を毎日投与した.対照群では500μl/PBS/150μl DMSO/dを投与した.生存期間を評価したところ,対照群の生存期間の中央値(範囲)は21日(14-23日)であった.これに比べて、γ-secretase inhibitorとDelta-like 4の中和抗体の投与群の生存期間の中央値(範囲)は別々に23日(17-27日)と24(19-28)であった(P>0.37)。 以上の結果から,Delta-like 4シグナルがヒト悪性中皮腫のin vivoでの成長を抑制しないだけではなく,生存期間の延長にも役立たない可能性が示唆された.本研究ではin vivoの結果はin vitroの結果とも一致しなかった、その原因に関してはDelta-like 4の中和抗体がなんらかの体内要素による影響を受け,その細胞増殖抑制作用が見られなかった可能性がある。今後その要素を見つけ、排除することによりDelta-like 4の中和抗体は癌の成長抑制効果を発揮する可能性が更に詳しく検討すべきと考えられる.
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Research Products
(1 results)