2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22710003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光秀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (60466810)
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Keywords | 生物海洋学 / 植物プランクトン / リン / 鉄 / アルカリホスファターゼ |
Research Abstract |
■アルカリホスファターゼ活性測定法の検討 2種類の基質を用いたアルカリホスファターゼ活性測定法を検討した。3-0-メチルフルオレセインリン酸は可視光による励起が可能であるため、小型の蛍光光度計による測定が容易である。各種培養株を用いた検討ではハロゲンランプを光源とし、フィルターにより励起・蛍光波長を調節する小型蛍光光度計を用いた簡易検出法が効果的であると分かった。しかし、東シナ海における現場群集にこれを適用したところ、有意な活性が検出された測点はなく、感度の向上に向けて改良が必要である可能性が示唆された。そのため、下記の南北太平洋においてはより感度の高い紫外励起基質4-メチルウンベリフェリルリン酸と紫外励起を備えた分光蛍光光度計を用いて測定することとした。 ■南北太平洋における現場サンプルの採取 白鳳丸KH-11-10次航海に参加し、南北太平洋の広汎にわたる海域よりサンプルを採取した。採取したサンプルはRNA・DNAサンプル、ELF-97を利用した細胞ごとアルカリホスファターゼ活性測定サンプルである。今後はこれらを測定し、主要な生物群ごとに特定の栄養塩制限下で発現もしくは抑制される遺伝子を定量する予定である。また、現場のアルカリホスファターゼ活性ポテンシャルを測定では、リン酸が高感度法を用いても検出限界以下となる西部北太平洋においては活性が他より高くなり、手法の有効性が確認された。しかし、活性ポテンシャルはリン酸がマイクロモルレベルになる赤道湧昇域や南半球の亜熱帯循環でも北太平洋の5~50%程度検出され、当手法は弱いリン酸ストレスでも検出する可能性がある。また、同じ測点でもよりリン酸濃度が高い亜表層でのクロロフィルあたり活性ポテンシャルが表層よりも高くなった場合もあり、群集構造の違いがバルクでの活性に影響を与える可能性がある。今後の遺伝子解析による生物群ごとの関連遺伝子の発現解析により、この点の解釈が進むことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乗船による研究においては、当初の計画通りかそれ以上のサンプル採集ができた。一方、室内培養では3月に発生した震災後の電力危機により、新たな室内培養系を立ち上げることが困難になり、平成22年度のサンプルを処理するにとどまった。現在再び室内培養系を再開し、基礎的なデータをとるのに必要なサンプルの採取を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は(1)これまでに採取したサンプルの処理・分析と室内培養実験の継続、(2)研究航海での天然サンプルの積み増しと天然群集を用いた添加培養実験、(3)研究成果の取りまとめと発表、の3点を中心に進める。(1)については特に蓄積している遺伝子サンプルを処理・分析する。プライマーの設計に関してはほぼ完了しているが、必要ならば培養系を利用して再確認を行う。(2)は白鳳丸KH-12-3次航海により西部北太平洋のデータを取得する。(3)は日本プランクトン学会、日本海洋学会、PICESなどでの発表を考えており、準備が整い次第学術誌への投稿を行う。
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