Research Abstract |
本年度はシナリオ分析などを通して種々の元素・素材に関するリサイクルプロセスの最適化評価を行った。評価は基本的に自然鉱石TMRとの比較をすることで行った。ただし,リサイクルされる元素・素材の特徴によって大きく以下のような2種類の評価方法を用いることがこれまでの成果によって明らかになっている。 1.金,銀,銅などのようにリサイクルによって得られる元素・素材と自然鉱石から製錬して得られる元素・素材がほぼ同じものである場合,すなわち不純物の影響がほとんどなくリサイクル材の物性に大きな違いがない場合,都市鉱石TMRと自然鉱石TMRを直接比較することが可能である。 2.鉄スクラップやアルミニウムスクラップのように,リサイクル中に銅や鉄といったトランプエレメントが不可避的に混入し,自然鉱石から製錬する場合に比べ品質が低くなるような素材を対象とする場合,スクラップの品質を向上させるための追加プロセスを考慮しなければならず,推算した都市鉱石TMRを自然鉱石TMRと単純に比較することができない。このような素材については,リサイクル材の品質と追加プロセスに伴う都市鉱石TMR(環境影響)の増加とのトレードオフを評価する。 そこでH23年度は2.の代表的として鉄スクラップのリサイクル性の評価を行った.鉄スクラップの特性は発生源によって大きく異なる.例えば,使用済み自動車から回収される鉄スクラップは,比較的簡便に大量を得ることができ,かつ混入する銅濃度も低い.一方で,建築物から得られる鉄スクラップはさらに大量であるが,元々使用されている鋼材が銅を多く含む棒鋼であり,さらに配線に起因する銅が追加的に混入する 具体的には,建築物,都市インフラ,自動車,また家電製品などから回収される鉄スクラップの希釈プロセスによる不純物濃度の低減とTMR増加とのトレードオフについて評価をおこなった.まず,種々の鉄スクラップの都市鉱石TMRを推算した.鉄スクラップのTMRと鉄スクラップ中の銅濃度に注目すると,バージン鉄と鉄スクラップは対極的な関係にあることが分かった.また,希釈プロセスに伴う鉄スクラップの品質向上と環境影響増加のトレードオフを評価するための手法を提案した.この手法によると,鉄筋コンクリート建築物から得られた鉄スクラップは棒鋼まで,家電製品(7種の平均),携帯電話,鉄骨構造建築物から得られた鉄スクラップは形鋼まで,自動車から得られる鉄スクラップ(Aプレス)は圧延鋼まで,Aシュレッダーは深絞り鋼板までリサイクルできるが,木造住宅から得られる鉄スクラップは木材をリサイクルしない限り,棒鋼としてもリサイクルすべきでないことが分かった.本報告では評価指標としてTMRを用いたが,二酸化炭素やコストといった指標にも応用可能と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初は,種々のスクラップについて「都市鉱石TMR」のデータベースを推算し,それに基づく簡易な評価を行うことを目的としていた.しかし,H23年度の研究により,いわば「リサイクル性状態図」という新しい評価手法を提案することができ,学会においても高い評価を受けた.さらに,これはH24年度において継続する予定であるが,TMRを国別に分解することで「資源の包括的自給率評価手法」を提案できることを見いだすことができた.
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