2010 Fiscal Year Annual Research Report
河口域生態系における窒素循環プロセスの定量化と人為起源窒素の影響評価
Project/Area Number |
22710014
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (00533316)
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Keywords | 窒素循環 / 安定同位体比 / 人間活動 / 硝酸態窒素 / アンモニア態窒素 / 河口域 |
Research Abstract |
人為起源窒素が河口域および沿岸海洋生態系に及ぼす影響を明らかにするために、本年度は大都市圏を流れる淀川と水田地帯を流れる北川・南川において現地調査を行った。1.淀川河口域においては、2010年5月と7月に硝酸態窒素の濃度および窒素安定同位体比(δ^<15>N)を測定した。濃度変化を塩分を保存成分とした混合モデルから解析したところ、保存的混合では説明がつかず、河口域内で硝酸態窒素が新たに供給されていることが分かった。δ^<15>Nの変化を濃度で重みづけした混合モデルから予測したδ^<15>Nと観測値を比較したところ、観測値は理論値よりも低い傾向にあった。特に観測されたδ^<15>Nは溶存酸素濃度および溶存態無機窒素に占めるアンモニア態窒素の割合が低下するにつれて減少する傾向があり、これは硝化反応に伴う同位体効果を強く反映したものと考えられた。そこで、レイリーモデルを用いて再生産されるδ^<15>Nを概算したところ、高塩分域の下層水(貧酸素水塊)中のδ^<15>Nの変動はほぼ硝化反応で説明可能であった。河川水に含まれるδ^<15>Nの高い人為起源NO_3^-は、海水との混合によって希釈されると供に、再生産されたNO_3^-による供給過程の影響を受けていたことが明らかになった。2.福井県嶺南地方を流れる北川と南川の上流域から河口域において、2010年12月から表層水の採水および多項目水質計による物理・化学パラメータの測定を行った。蛍光法を用いた高感度アンモニア態窒素分析の結果によると、北川と南川では人為的に供給されるアンモニア態窒素の影響が明瞭に異なることが示された。南川では、中流域に負荷源が存在するものの、その影響は流下に伴い消失する。しかしながら、北川では人間活動が活発化する中下流域で、急激な濃度上昇があり、その影響は河口域まで続き、海域への負荷源となっていることが明らかになった。
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