2011 Fiscal Year Annual Research Report
河口域生態系における窒素循環プロセスの定量化と人為起源窒素の影響評価
Project/Area Number |
22710014
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (00533316)
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Keywords | 窒素循環 / 安定同位体比 / 人間活動 / 硝酸態窒素 / アンモニア態窒素 / 河口域 |
Research Abstract |
本研究の目的は、陸域から負荷される窒素化合物の河口域生態系内における動態を明らかにし、海域への影響を評価することである。本年度は、北川・南川の上流から小浜湾湾口部にかけて、さらに都市に隣接する淀川河口域において現地調査を実施した。 北川と南川では集水域の土地利用形態が大きく異なっており、小浜湾への栄養塩供給に対しても大きな影響を与えていた。つまり、水田利用期に河川水中の窒素濃度が減少し、リン濃度が増加する。この濃度変化は河川間で大きく異なり、集水域内に多くの水田を有する北川ほど変化率が大きかった。また、硝酸イオンの同位体比から、北川・南川における硝酸イオンの起源は人為由来のものはほとんど認められず、冬季には降水・降雪、夏季には森林土壌に由来するものが多いことが分かった。しかしながら、水田利用期には、硝酸の窒素同位体比が著しく上昇し、水田内での生物化学的作用の影響を強く受けている可能性がある。一方、小浜湾においては河口から湾口までの縦断観測を2011年3月から11月まで行った。その結果、春季には小浜平野で沈み込んだ地下水が河口から約2kmほど沖合の水深15mあたりで湧出していること、それに伴って植物プランクトンが急増し、一次生産力が非常に高くなっていることを見出した。このことは、河川由来の窒素に加え、海底湧水として小浜湾へ流出する窒素も生物生産を支える重要な栄養源であることを示唆する。 感潮域の発達する淀川では、陸域から海域へ流入する栄養塩は、単純に海域へ供給されているのではなく、塩水侵入の影響を受けながら、希釈・植物プランクトンの取り込みの効果を受けながら、海域へと流出していることを明らかにした。また、河口域に形成される貧酸素水塊中では栄養塩が新たに生成されており、これがエスチュアリー循環により有光層へ持ち上げられ、海域への新たな栄養塩負荷源となっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り現地観測をすべて実施し、十分量のサンプルを得た。年度末まで調査を実施したため、分析・解析が遅れている感は否めないが、現在鋭意分析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
北川・南川および小浜湾における現地調査を今後も実施する。特に、本年度見出された小浜湾の海底湧水現象は、河口域の窒素循環を考える上では無視することはできないため、従来の観測に加え、地下水トレーサー(ラドン)も組み込みながら、河口域が陸域から供給される窒素化合物に及ぼす影響を評価していく。一方、人為的インパクトの強い淀川におけるサンプリングは、十分実施できたため、今後はモデル化による定量化を試みる。
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