2011 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼における菌類の生態および難分解性有機物の分解に果たす役割の解明
Project/Area Number |
22710017
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
鏡味 麻衣子 東邦大学, 理学部, 講師 (20449250)
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Keywords | 印旛沼 / ツボカビ / DGGE法 / 珪藻 / 蛍光染色 / 花粉 / Mycoloop / ミジンコ |
Research Abstract |
本研究では、「自然湖沼」において菌類の出現パタンと現存量の把握、および菌類による有機物、特にプランクトン遺骸と花粉、の分解速度の定量化を作業目的とする。平成23年度は湖沼に生息する菌類の中でも、花粉を分解するツボカビに着目し、その分解速度を室内実験により測定することを試みた。まずは培養系を確立するために、単離したツボカビ2種(Chytriomyces cf hyalinus, Rhizophydium cf. brooksianum)について培養方法を検討した。その結果、寒天培地上での培養だけでなく、花粉と滅菌水の中での培養が可能となった。培養系を用いて、ツボカビが花粉を分解することで、花粉中の炭素、窒素、リンをどの程度消費するのかを調べた。その結果、全ての元素について50%近く消費することが明らかになった。また、花粉の中には脂肪酸などの栄養素が多く含まれることも明らかとなり、ツボカビがそれらを利用して成長していると考えられた。今後は、花粉中にふくまれる物質が、ツボカビによって消費された後、どの程度動物プランクトンに流れるのかを、明らかにする予定である。 印旛沼に出現する菌類の出現パタンを把握するため、昨年度と同様に、植物プランクトンに寄生するツボカビを顕微鏡により観察し計数した。2010年度に2週間に1回採取した西印旛沼と北印旛沼の湖水を染色液(Calcofluor white)にて染色し、蛍光顕微鏡下にてツボカビの種組成と密度(胞子体数)を調べた。その結果、2009年度と同様に、両沼において、春と秋に優占している珪藻Aulacoseira granulataとA. amniguaにそれぞれ2種類のツボカビが寄生していることが確認された。また、その出現パタンは2009年度と同様で、栄養塩濃度の高い西印旛沼のほうが、珪藻およびツボカビの密度は高かった。印旛沼の菌類群集組成について、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)と顕微鏡観察により調べた結果を論文(Microbial Ecology誌)として発表した。 ツボカビを検出する方法について、共同研究者とともに文献を収集して、総説として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、実験を3種類予定していたが、培養系の確立が困難であったため、1種類しか実施できなかった。一方で、本研究の成果を論文として23年度に公表できたことは、当初の計画以上であった。
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Strategy for Future Research Activity |
培養系の確立が予想以上に困難であったため、今後は、培養系の確立に頼らずに出来る方法として、分子生物学的手法を併用し、目的を遂行する予定である。
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