2011 Fiscal Year Annual Research Report
北大西洋の混合域における臭素系ハロカーボンの高濃度現象の解明
Project/Area Number |
22710018
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大木 淳之 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (70450252)
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Keywords | ブロモホルム / ジブロモメタン / 臭化メチル / 植物プランクトン |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、2008年8月に北西太平洋の混合域北部(北緯42~44度,東経145~160度)で海水中の臭素系ハロカーボン(臭化メチル、ジブロモメタン、ブロモホルム)が高濃度になった現象について、その実態とメカニズムを明らかにすることである。そこで、2011年7~8月に北西太平洋の混合域~亜寒帯域で海洋観測を実施して、海水中の臭素系ハロカーボン濃度のモニタリングを実施した。その結果、2008年の観測で高濃度が見つかった海域とほぼ同じ緯度帯で臭素系ハロカーボンが高濃度になることが再確認された。臭素系ハロカーボンの濃度を緯度分布にすると、混合域南部から北部に向かって濃度が上昇し、混合域北部を超えて亜寒帯領域に入ると濃度が急激に低下した。このような傾向は、2010年に南インド洋で実施した観測結果とも一致している。海洋では一般的に、夏季の混合域では北に向かうほど生物生産量が増え、それに伴い海水中の臭素系ハロカーボンの濃度が上昇することが考えられた。従来研究では、海域によらず植物プランクトン量が増えれば臭素系ハロカーボン濃度が上昇すると推測していたが、本研究により植物プランクトン量と臭素系ハロカーボン濃度に正の相関がみられるのは混合域に限ることが示唆された。混合域に生息する植物プランクトンは臭素系ハロカーボンを活発に放出するが、亜寒帯系の植物プランクトンは放出量が少ないことが推測された。2011年の海洋観測では、混合域北部の海水を採取して船上培養実験を行い、植物プランクトンが臭素系ハロカーボンを放出する量を調べた。船上培養実験の結果、植物プランクトンの増殖とともに臭素系ハロカーボンの濃度が有意に上昇することが確認できた。これまでの観測結果を総合すると、混合域は臭素系ハロカーボンの主要な放出源であり、放出量は生物生産量に依存することがいえる。
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Research Products
(3 results)