2011 Fiscal Year Annual Research Report
粘土資源利用に伴うダイオキシン類の環境動態と天然生成メカニズム解明に関する研究
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22710021
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
堀井 勇一 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任 (30509534)
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Keywords | 環境分析 / 地球化学 / ダイオキシン / 窯業 |
Research Abstract |
カオリン質粘土の大部分は、窯業の主要原料として用いられる。耐火物や陶磁器の製造において、原料である粘土は1000℃以上の高温で加熱処理されるため、含有するダイオキシン類は、この工程において分解又は揮散するものと考えられる。当該年度は、サブテーマ2「窯業に係るダイオキシン類の環境負荷量推定」を遂行するため、実験炉を用いたカオリン質粘土の加熱実験を行い、加熱前、加熱後(残さ)及び発生ガスの測定から、加熱処理におけるダイオキシン類の動態、マスバランスを調査した。本実験から得られた最大の揮散割合を用い、かつ発生したダイオキシン類がすべて環境中へ放出されると仮定した場合、国内窯業に係るダイオキシン類の大気環境負荷量は、重量ベースで35g/yr、TEQベースで0.13g-TEQ/yrと推算された。これは国内総排出量(2010年度)の0.08%相当と、全体に占める寄与率は非常に低いことがわかった。サブテーマ3「ダイオキシン類の起源と生成メカニズムの解明」においては、日本大学、愛知大学の協力を得て瀬戸地域の粘土鉱山を中心にフィールド調査を行い、これら試料について地質・岩石学的記載、及び層別のダイオキシン類濃度分布を明らかにした。その結果、カオリン質粘土上部に狭在する亜炭層から高濃度ダイオキシン類が検出されることが新たに判明した。これらの知見は、ダイオキシン類の環境リスクだけでなく、作業環境評価の基礎データとしても非常に重要である。当該年度の成果を基盤に、ダイオキシン類の天然生成プロセスの解明に取り組むことで、環境汚染を未然に防止するリスク管理技術への活用が期待される。 得られた研究成果については、積極的な情報発信を行い、査読付き論文3報、学会発表7報を達成した。また、一般公開の研究発表やポスター展示を行うなど、本研究の重要性や成果について、広く周知に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度計画の窯業に係るダイオキシン類の環境負荷量推定(サブテーマ2)について、予定どおり遂行することができた。サブテーマ3については、予定より調査範囲を拡大し、ダイオキシン分布や特徴について新規性の高いデータを得ることができた。また、得られた研究成果がEnvironmental Science and Technologyに掲載されるなど、学術的に高い評価を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、サブテーマ3「ダイオキシン類の起源と生成メカニズムの解明」について研究を遂行する。昨年度に引き続きカオリン粘土中ダイオキシン類の起源を突きとめるため、風化度の異なる花南岩及びその風化堆積物を採取・測定し、鉱物・元素組成とダイオキシン類分布の関係について調査する。本年度の粘土鉱山調査結果から、カオリン質粘土上部に狭在する亜炭層から高濃度ダイオキシン類が検出されることが判明した。今後はカオリン質粘土だけでなく、堆積年代及び堆積環境の異なる亜炭層を対象に調査地域を拡大し、含まれるダイオキシン類と有機物の関係について安定同位体比を用いた解析を行う。以上、得られたダイオキシン類濃度、炭素安定同位体組成、堆積環境・年代、岩石学的情報を整理することで、ダイオキシン類の天然生成メカニズムについて検証する。
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