2010 Fiscal Year Annual Research Report
H2濃度を指標に海洋窒素固定活性を直接検出することで活性分布を詳細に描写する
Project/Area Number |
22710024
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
川口 慎介 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, ポストドクトラル研究員 (50553088)
|
Keywords | 水素ガス / 海洋 / 窒素固定 / H2 |
Research Abstract |
全海洋の6割を占める海域では窒素栄養が不足しているため,窒素固定による新窒素供給は,生物生産を支配する極めて重要なファクターとなっている。本研究は,航走連続観測が可能な溶存H_2濃度を活性検出指標に用いる。新指標の確立は,窒素固定観測を"点"から"線"へと発展させ,従来不可能であった窒素固定活性分布の迅速な検出と詳細な描写を可能にする。具体的には、調査船による航走観測が可能なガスクロシステムを立ち上げ、海洋表層のH2濃度過飽和を検出することで窒素固定活性を把握する。本年度は本研究の遂行に不可欠なガスクロシステムを構築した。最適分析条件決定のための基礎実験を行った。ガスクロシステムの根幹となる微量還元性気体検出器の最適条件を決定する実験を実施し、検出器温度290度で高精度高感度分析が実現することを確認した。この他にバルブを含めたガス配管用継手類を接続し、船上での多数の分析試料に対応できるより簡易なガスクロシステムへと随時改良を施しH2とCOについて濃度を定量するのに十分な分離が可能になった。同システムをインド洋調査航海に持ち込み海水試料の分析を実施し、本来低濃度であるべき深層海水中で、既報値と同様に低濃度のH2の観測に成功した。これは同システムがコンタミネーションを回避した有用なものであることを保証している。同航海ではH2を大量に含むことが知られている熱水プルーム試料の分析も実施し、一般的な深層海水中のH2濃度よりもはるかに高いH2濃度を得た。同試料ではH2とともに熱水プルーム中で高い濃度を示すCH4の高濃度も見られており、本研究で構築したシステムが正常に稼働していることを示している。
|