2010 Fiscal Year Annual Research Report
流域スケールでの水域生態系保全を目的としたダム群の評価と提言
Project/Area Number |
22710030
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉村 千洋 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10402091)
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Keywords | ダム群 / 河川生態系 / 粒状有機物 / 金属輸送 / 分布型流出モデル / 個体群存続可能性分析 |
Research Abstract |
本研究では個別のダムの影響評価だけでなく、複数のダムの相互作用にも着目し、河川下流域や汽水域の生態系に与える影響を流況と物質輸送に着目して解明することを目的としている。今年度は、複数のダムが設置されている揖斐川流域と相模川流域を対象に調査研究を開始した。 揖斐川流域では、ダム湖の循環期における流域スケールでの水中有機物と金属動態に着目し、本川にダムのない長良川を比較対象とすることで、ダム群による生元素動態への影響の累積効果を解明した。各物質の濃度変化だけでなく、調査で得られた有機物の元素組成や分子構造解析、そして逐次抽出法による金属分析の結果、微細な粒状有機物はダム湖を得るごとに芳香族化合物の割合が増加し、それに伴い鉄やアルミニウムなどの粒状態金属の流下量が著しく増加することが示された。 一方、相模川流域においては、既存のデータを整理した上で宮ヶ瀬ダムの管理者に聞き取り調査を実施し、ダム群による河川流況や河川性魚類への影響に関して作業仮説を設定した。その上で、分布型流出モデルを対象流域に適用するために、地形モデルや河道モデルなどを作成し、1990年から10年間の流出計算に必要な降雨データやダム放流情報を収集した。これにより、各流域内におけるダムの有無やダム群の配置などが下流域の河川流況に与える影響をシナリオ解析が可能となる。さらに、アユなどの淡水魚への影響を解明するために、個体群存続可能性分析(PVA)を空間的に拡張することにより流出モデルと組み合わせるための検討を行い、ダム群が水生生物の存続可能性に与える影響を定量評価するための分析手法を準備した。
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Research Products
(5 results)