2010 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性有機汚染物質の生物利用性に与える溶存有機物質の影響評価
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22710034
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
池田 和弘 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任 (60422987)
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Keywords | 疎水性有機汚染物質 / 溶存有機物質 / 生物利用性 / モデル細胞膜 / 医薬品 / 多環式芳香族炭化水素 / 毒性 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、モデル細胞膜への疎水性有機汚染物質の分配に与える水環境中および排水中の溶存有機物質の影響を定量し、生物利用性や毒性への影響を把握することで、バイオアッセイによる水質管理に有用な情報を提供することである。今年度の成果を以下にまとめる。 1.生物を模擬したモデル細胞膜としてSovicell社製Transilを利用した。実験系の確立のため、モデル細胞膜の保存性(堅牢性)や既存の研究でよくモデル細胞膜として使用されるリポソームを用いた結果との比較を行った。アントラセンを用いた分配係数測定の結果から、モデル細胞膜は4℃で保存すると2週間は使用可能であることが分かった。また、PAHsに関して卵黄ホスファチジルコリンで構成されたTransilへの分配は、流動相のリポソームに対するものとほぼ同じ程度となった。これらよりTransilは疎水性有機汚染物質の生物細胞膜への分配を評価するために使用できることが分かった。また操作性はリポソームより優れていた。 2.多環式芳香族炭化水素類や3種類の医薬品の溶存有機物質共存下での定量法を構築した。イフェンプロジルのモデル細胞膜への分配実験から、表面付近に静電的相互作用で収着していることが示唆された。また、アントラセンなどPAHsは溶存有機物の共存により、細胞膜への分配が減少したが、イフェンプロジルはほとんど影響を受けなかった。 3.次年度に使用する溶存有機物質の濃縮と構造に関する特性解析を行った。荒川水系の支川の上流域から抽出した溶存有機物質はタンパク質や糖質の含有率が高く、高分子量であり、下流域のものとは異なる性質を有していた。このことから、とくに親水性官能基を有する疎水性有機汚染物質に対する影響は下流域のものと異なることが推測された。
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Research Products
(1 results)