2011 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性有機汚染物質の生物利用性に与える溶存有機物質の影響評価
Project/Area Number |
22710034
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
池田 和弘 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任 (60422987)
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Keywords | 疎水性有機汚染物質 / 溶存有機物質 / 生物利用性 / モデル細胞膜 / 医薬品 / 多環式芳香族炭化水素 / 毒性 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、水環境中に存在する溶存有機物質(DOM)が疎水性有機汚染物質の水生生物への取り込みに与える影響を評価することである。DOMは河川水および下水処理水から抽出し、疎水性有機汚染物質の生物への取り込みはモデル細胞膜への分配係数の測定により評価した。本年度の成果を示す。 1.荒川4地点、琵琶湖、下水処理水からDOMを膜装置(分画分子量1000Da)により抽出し、三次元励起蛍光スペクトル法などで特性解析を行った。膜装置を透過する低分子のDOMに対するピレンの収着係数(Kdoc)はほぼゼロであることが確認され、その挙動に影響を与えるのは高分子成分であることが分かった。本研究で採用した抽出方法の妥当性が確認された。 2.疎水性有機汚染物質のモデル細胞膜への分配は、実環境から抽出したDOMの共存によって低下することが確認された。低下の程度は実河川中のDOM濃度レベルでは大きくなく、例えばピレンでは荒川で2%程度であった。低下量からピレンのKdocを推算した結果、蛍光消光法で実測したKdocと比較的よく一致した。このことから疎水性有機汚染物質はDOMに収着することで細胞膜に分配されなくなる機構が確認された。荒川のDOMのKdocは市販されている米国スワニー川NOMと同程度からやや小さく、琵琶湖のものはかなり小さかった。 3.多環式芳香族炭化水素類、医薬品およびエストラゲンなどのKdocを測定した結果、Karickhoff(1981)の式を用いてKowから計算した推測値とあまり変わらないものが多かったが、イフェンプロジルや1-アミノピレンのように正の電荷を持つものは推測値より大きなKdocとなった。疎水性の大きい、正の電荷を持つ物質についてはDOMの共存により水生生物への取り込みが大きく減少することが示唆された。
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Research Products
(2 results)