2011 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛等重金属の存在形態を考慮した生態リスク評価手法の開発と適用に関する研究
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22710036
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
内藤 航 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (10357593)
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Keywords | 重金属 / DGT / WHAM / 化学平衡モデル / 生態リスク評価 / bioavailability |
Research Abstract |
本研究の目的は、地域特異的な水質要因(例えば硬度、懸濁物濃度、pH)の違いを考慮して、亜鉛等重金属類の水生生物へのリスクを定量的に評価する技術の開発と現実的なリスク管理のあり方を提案することである。平成23年度は、平成22年度に続き、亜鉛等重金属の汚染レベルが比較的高い地域と下水処理施設周辺河川を対象として、硬度や有機物濃度等の水質要因の異なる複数の地点(休廃止鉱山周辺と都市河川)において環境水のサンプリングをして、重金属類の濃度(生物利用可能量含む)と様々な水質項目の測定を行った。生物利用可能量の把握には、特殊な膜を通過できる形態の金属のみを測定する薄膜拡散勾配(DGT:diffusive gradient in thin films)法を用いた。さらに、金属化学平衡モデル(WHAM:Windermere Humic Aqueous Model)を用いて各水域の存在形態(化学種)の計算を行い、DGTによる測定の結果と比較検証を行った。水生生物への影響が懸念される亜鉛、銅、ニッケル、鉛を対象とした測定の結果、本年度のサンプリング調査においても、昨年度と同様に、金属ごと、地点ごとに生物利用可能量に違いが見られた。各金属の生物利用可能量と溶存有機炭素の関係より、重金属の生物利用性に対して水中に存在する有機物が重要な役割を果たしていることが、前年と同様に確認された。金属化学平衡モデル(WHAM:Windermere Humic Aqueous Model)により推定した生物利用可能量とDGTによる測定を比較すると、亜鉛とニッケルはほぼ同様の傾向を示したが、銅や鉛はWHAMの方がDGTよりも、生物利用可能な割合を大きく推定した。その傾向は都市域の河川において顕著に見られた。これは、各金属と有機錯体を形成する有機物の種類とその錯体生成能の違いに起因していると考えられた。このような知見の蓄積は、水域ごと、金属ごとに異なる生物利用可能量を考慮した現実的かつ科学的知見に基づく生態リスク評価手法の確立とそれを用いた評価・管理の実現に重要な役割を果たすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響により、サンプル調査の実施時期がやや遅れたが、年度末までに想定していた数のデータを得ることができた。季節による違いを明らかにするために、24年度は23年度にできなかった春先にサンプリング調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は重金属の存在形態を考慮した生態リスク評価手法の開発に資する補完的データの蓄積とこれまでに得たデータを丁寧に解析し、最終的な結果を学術誌に投稿する。開発予定の手法(考え方)の適用範囲を明確にし、データの多寡に応じて評価が可能になるように開発手法の発展を目指す。
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Research Products
(2 results)