2011 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化による生態系変化及び適応策の経済評価に向けた空間的応用一般均衡モデルの開発
Project/Area Number |
22710040
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 講師 (70507699)
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Keywords | 気候変動 / 生態系変化 / 空間的応用一般均衡モデル / 時空間解像度 / 土地利用変化 / シナリオ分析 / シミュレーション / 経済評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は、温暖化影響による生態系サービスの変化の経済評価を行うために、経済モデルと物理モデルとの空間的・時間的解像度を整合した空間的応用一般均衡モデルの開発とシナリオを用いたシミュレーション分析を行うことである。本年度においては、経済モデル及び物理モデルとの連携モジュールの構築、及びシナリオによるシミュレーション分析を目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。 第1に、物理モデルにおいてよく用いられるメッシュ単位の情報を県単位の経済モデルへ入力可能な形式に変換するために、空間的・時間的スケールを整合する経済-物理連携モジュールを構築した。ここでは、メッシュレベルの情報を県単位の入力情報として扱うことのみを想定しているため、アップスケール時には各メッシュの総和が県単位の入力情報とした。 第2に、生態系サービス変化を地理的変化に関連付けることにより、土地利用変化に着目したシナリオを作成した。ここでは、農林水産業関連の土地利用量を削減し、削減分を他の産業部門の土地利用とする土地利用変化シナリオと、土地利用モデルから計算されるポリネーション・サービスに対する直接支払がある場合及びない場合の土地利用変化シナリオの2つのシナリオを想定した。 第3に、土地利用変化シナリオによるシミュレーション分析を行った。前者の土地利用変化シナリオでは、農林水産業関連の土地利用をサービス業関連に変更した場合、サービス業以外の産業部門への土地利用変更と比較して、サービス業関連の生産量は増加するものの、全体の生産量の増加分は相対的に小さいことが示された。後者の土地利用変化シナリオでは、ポリネーション・サービスに対する直接支払がある場合、生産量の減少率は相対的に大きいものの、二酸化炭素排出量の減少率も相対的に大きいことが示された。以上から、本研究で構築した経済モデルと物理モデルとの空間的・時間的解像度を整合した応用一般均衡モデルによる経済評価が可能であることが確認された。しかしながら、ここでは仮想的なシナリオを想定したため、今後はより現実的なシナリオや対策を想定した分析が必要である。
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