Research Abstract |
FAOSTATのResourceSTATにおける世界各国・各品目の統計資料データを編集し,1961-2009年の期間の農薬貿易額を抽出した.月別のNCEP-NCAR気候再解析データを更新し,各種気候モードに対応する周期成分を検出した.この過程で,エル・ニーニョ/南方振動(ENSO)には,データから2-7年周期成分を抜き出し,地球温暖化現象については,長期の線形傾向を用いるなどの対応をした. 各種気候モードを表す指数(NINO3.4や北極振動指数など)に応答する気候条件や農薬貿易統計の額と多様性に関するアノマリについては,農薬の中で殺虫剤・殺菌剤・除草剤・消毒剤のように細分化されたものを整備し,その上で合成図を作成した.有意水準を0.1に設定し,モンテ・カルロ法によって統計学的に有意なアノマリを検出することで,NINO3.4に応答する貿易額と多様性の変化を定量化するに至った.農薬の使用量と貿易額との変換と不確実性,また,マラリアの発生状況については,現在解析を進めている. 殺虫剤においては,エルニーニョ期翌年のオーストラリアの輸入額の減少傾向は,800万米ドルを超え,ENSOに対応して殺虫剤の需要が大きく変化することを確認できた.このような減少傾向はカザフスタンにもみられ,増加傾向を示すモンゴルとは対照的であった.アフリカ大陸では,リビアとナンビアにも減少傾向があり,ENSO起源のテレコネクションを農薬貿易から評価することができた.殺虫剤以外の農薬やENSO以外の気候モードについても,同様の解析を実施し,気候変動が国際貿易に与える影響についての解析スキームを確立した,したがって,22年度の研究成果は,農薬について,ロッテルダム条約による貿易規制およびストックホルム条約による使用・製造規制の効果と,気候変動の影響を相対的に評価する上で,重要な基礎資料と成り得る.
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