2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境資源の自治的管理に関する研究:環境政策におけるオープン・コモンズの含意
Project/Area Number |
22710045
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三俣 学 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (10382251)
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Keywords | 万人権 / ノルウェー / フィンランド / スウェーデン / 協治 / 環境ガバナンス / コモンズ |
Research Abstract |
昨年のノルウェー、フィンランドでのフィールド調査に続き、スウェーデン(ストックホルム市・リンショーピン市)での現地調査を、研究協力者である学術振興会PD研究員(当時)の嶋田大作氏(現在、福岡女子大学講師)とともに予定通り実施することができた。 二ヵ年にわたり北欧3か国におけるフィールド調査を通じ、北欧の万人権がいかなる歴史的過程を経て形成され、いかなる実態であるかをある程度まで把握(ないしその判明につながる資料を入手)することができた。また近年、万人権の名のもと自然にアクセスしようとする人々(団体)と土地所有者の間での衝突はとりわけ美しい海岸部や都市部で顕著にみられ、万人権を生かしながらも、そのような衝突や紛争に際して、またその予防を図るべく指針として、万人権の法制度化が進んでいる。 とはいえ、調査した3か国ではいずれも「自然の恵みは国や世代を超え、万人が享受すべき」という思想を残そうとしている共通性が確認できた。と同時に、1)研究者、政策担当者などの関係者たちの万人権およびその法制度あるいは法制度化に対する考え方、2)万人権の法的枠組みには相違があることが判明した。 このような現場調査を通じたプロジェクトでは、その研究開始当初に据えていた開放型コモンズと閉鎖型コモンズが、どういった歴史的・社会的・経済的背景の相違から生じてきたのかという問いに答える基礎材料を提供するものとなった。とりわけ、本研究で着目した開放型コモンズの特性とその長期存立条件については、フリーライダーの排除が重要な課題であることが判明し、そのためには、小さなコミュニティを超え、公的部門が地域に根づく慣習を重視しながら、柔軟性ある規制措置を講ずることが重要になるという示唆を得た。
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