2011 Fiscal Year Annual Research Report
有害危険物質拡散災害時の影響評価のための都市詳細拡散予測手法に関する研究
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22710051
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中山 浩成 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究職 (50535903)
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Keywords | 大気乱流 / 大気拡散 / 有害危険物質 / Large-Eddy Simulation |
Research Abstract |
実在都市市街地内において点源放出されたトレーサガスの非定常拡散挙動に関し、Large-Eddy Simulation(LES)乱流モデルを用いた数値シミュレーションを実行し、風洞実験結果と比較した。まず、乱流場について、平均風速分布はいずれの風下位置においても実験結果とよく一致した。乱流強度(風速変動の標準偏差)分布は、市街地上空部ではよく一致しているものの、市街地内部では全体的に過小評価する傾向が得られた。これは個々の建物を解像する格子数不足によるものと考えられる。しかしながら、分布形状については実験結果と対応しており、流れのパターンについてはよく捉えられているものと判断している。 次に、拡散場について、風洞実験における地表近傍の平均濃度・変動濃度標準偏差の水平分布は、市街地形状の影響により局所的な分布性状を示している。一方、LESシミュレーション結果では、建物の解像度不足の影響によりそういった局所的分布性状は捉えられなかったものの、全体的には定量的によく一致した結果が得られた。これらにより、本研究で開発された拡散モデルは、都市・市街地内での大気拡散の基本的な特性は再現できたものと判断される。 本成果から、国内外での学会、ならびに、論文発表を行った。都市における有害危険物の拡散問題が社会的関心を集めている中で、複雑市街地形状の中での濃度分布パターンを的確に捉えられる予測モデルを構築していくことは、今後ますます重要性が高まっていくものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実在都市市街地内での拡散現象をLES乱流モデルにより数値計算を行う際、まず、対象とする市街地形態を精緻に解像し、計算モデル内に大気乱流場に相当する接近流を作ることが重要となる。本研究では、計算負荷の問題により、個々の建物から生成される剥離乱流挙動を的確に予測できるほどの解像度を設けることはできなかったものの、流れのパターンは再現することができた。また、市街地内地表近傍の平均濃度・変動濃度標準偏差についても実験結果によく対応した分布性状を得ることができた。これらのことから、当初の計画通り、モデルの基本的性能を実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々な気象条件下での応用事例に適用することを考えている。本モデルではファーストステップとして、大気を熱的影響のない中立の場として解析しているが、原子力施設からの放射性物質拡散問題などを考える際、大気の温度成層性を取り扱うことが重要となることから、モデルの改良に臨んでいきたいと考えている。こういった手法の適用範囲を広げることで、原子力事故など緊急時対応に必要なモデルとして使われることが期待される。
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