2011 Fiscal Year Annual Research Report
重金属による紫外線発がんの増強-ヒストン修飾から解くDNA損傷生成・修復率の変化
Project/Area Number |
22710065
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
豊岡 達士 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (40423842)
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Keywords | 紫外線 / 重金属 / ヒストン修飾 / DNA損傷 |
Research Abstract |
本研究の目的は、重金属が紫外線によるDNA損傷の生成、及びその修復を変化させるのか否か、また、それにはヒストン修飾変化が関与しているのか否かを明らかにし、皮膚がん罹患率上昇の原因の一端を解明することである。 23年度は、22年度の研究によって申請者が明らかにしたヒストン修飾(ヒストンH3のリン酸化)を誘導する金属をヒト培養細胞HaCaTに作用した後、紫外線を照射し、その後のDNA損傷の生成・修復等をDNA損傷マーカーとして近年注目されている、ヒストンH2AXのリン酸化を指標に検討した。尚ここではヒストン修飾を誘導する金属を『ある種の金属』とする。 ある種の金属と紫外線UVB(280-320nm)を作用したところ、それぞれの単独作用に比して顕著なヒストンH2AXのリン酸化が持続的に観察された。実際に紫外線UVBによって生成されたDNA損傷(CPD:シクロブタンピリミジンダイマー)量を定量したところ、紫外線照射直後におけるCPD生成量は金属作用の如何を問わず同程度であったが、照射後24時間時点においては、金属作用を行った細胞でCPDが顕著に高いことが判明した。これらの結果は、ある種の金属を作用させるとヒストンの修飾が起こり、クロマチンの高次構造が変化し、紫外線照射によって生成されたCPDの修復酵素による発見・認識が困難になるなど、その修復率に影響を与えた可能性が考えられた。また興味深いことに、一般的にDNA損傷の生成率が低いと考えられている紫外線UVA(320-400nm)と金属を複合作用したところ、劇的なH2AXのリン酸化が誘導されることが分かった。その理由については現段階では不明であるが、地上に到達している紫外線のほとんどがUVA領域にあることを鑑みると、当該結果は金属と紫外線の複合曝露による発がんという観点から重要であると考えられる。23年度の研究によって得られたこれらの結果は細胞の変異及び発がんの亢進の原因となる可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピストン修飾を誘導する金属を数種類明らかにすることができ、それら金属存在下においては、紫外線UVBによって誘導されるDNA損傷の修復が遅延することが示唆されたため。加えて、当初研究予定に入っていなかった紫外線UVAと金属の複合作用においても、複合作用によるDNA損傷の増強誘導が観察され、皮膚発がんを考える上で興味深い結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ある種の金属がヒストン修飾を誘導すること、そしてこれら金属の存在下では紫外線照射によってDNA損傷の修復が遅延されることが明らかとなったが、ヒストン修飾がどのようにしてDNA損傷修復の遅延に繋がるかという直接的な証明が得られていないため、今後、当該問題について検討する。
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