2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性触媒のデザインにおけるカーボンナノチューブ内部空間の利用
Project/Area Number |
22710088
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
湯村 尚史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (80452374)
|
Keywords | ナノチューブ / 制限された空間 / 触媒 / 密度汎関数法 / 軌道相互作用 |
Research Abstract |
本年度の研究では昨年度の研究に引き続き、カーボンナノチューブのジケトン修飾により生成する空孔欠陥の電子的特性を明らかにした,複数のジケトンがアームチェアカーボンナノチューブのチューブ軸方向に一列に並んだ場合、ジグザグ端を有する大きな空孔が生成する.この特異な構造特性により,スピン局在状態がエネルギー的に安定になる。この結果、ジグザグ端上に並んだ酸素原子にスピン密度が発現することが分かった.これらは酸素原子上に局在したp軌道に不対電子が占有することを意味し、対応するジグザグナノリボンと同様の電子的特性である.この時,ジケトン修飾によるカーボンナノチューブに空孔欠陥が生じ、その結果、炭素表面の平面性が向上することが重要になる。 この空孔欠陥は化学活性が高いため、触媒クラスターを担持する可能性がある.この想定に従い、密度汎関数法計算を行ったところ、空孔欠陥があった場合、触媒クラスターと炭素表面との結合エネルギーが空孔欠陥がない場合よりも三から四倍増大することが分かった.この時、触媒クラスターのスピン密度分布は、ラジカル性を有する炭素表面との相互作用により大きく変調することが分かった。これらの結果は、炭素表面の電子特性を空孔欠陥の導入により変化させることで、それに担持される触媒クラスターの特性が制御できることを意味し、今後の触媒設計、特に水素分子や酸素分子の活計化を目指した触媒設計に重要な指針を与えるものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カーボンナノチューブの位置選択的化学吸着においては、ある程度修飾分子の構造的制限を利用する必要がある。これらを高精度の密度汎関数法計算で行う場合、ナノチューブのユニットセルをある程度大きくする必要があるが、これは計算時間の増大を引き起こした。これが上記区分にした理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の当初の計画では、ビスマロネートによるカーボンナノチューブの化学修飾を用いて、その内部空間に触媒サイトを構築するものであった。しかし、最近、過マンガン酸カリウムによるカーボンナノチューブの化学修飾が位置選択的に進行するという実験報告があったため,この知見に注目し、実際、それに関連した密度汎関数法計算をしている。その結果、過マンガン酸カリウムの化学修飾後、修飾基がシケトン基に変換後、ナノチューブ表面に修飾の度合いにより大きな空孔欠陥が生成することがわかった。これらの知見をもとに触媒活性中心を構築させることを目的に変更している
|
Research Products
(7 results)