2010 Fiscal Year Annual Research Report
ゲルマニウム基板上に構築した金属ナノワイヤ構造とその電子物性
Project/Area Number |
22710095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中辻 寛 東京大学, 物性研究所, 助教 (80311629)
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Keywords | 表面・界面物性 / ナノ構造物性 / 低次元系 / 表面電子状態 / 角度分解光電子分光 / 走査トンネル顕微鏡 / ゲルマニウム / 金 |
Research Abstract |
単原子層以下の金属を蒸着した半導体表面で実現される(擬)1次元構造は、特有の相転移現象(パイエルス不安定性による金属・絶縁体転移)や1次元電気伝導を担う点で興味深く、最近Ge(001)表面にAuを1原子層程度蒸着した系において1次元構造形成が報告された。本研究ではこのナノワイヤ構造について、その電子物性を明らかにすることを目的とした。22年度は予備研究(Nakatsuji et al., Physical Review B 80(2009)081406(R).)で明らかになった異方的2次元金属状態の起源を探るため、光電子分光(PES)と走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、原子構造と局所電子状態の知見を得た。原子構造は先行研究にていくつかのモデルが提案されていたが、STM観察ではナノワイヤ間に数原子層深さの溝が観察され、(111)マイクロファセットを含むモデルを支持する結果を得た。ただしPESによるGe 3dコアレベル測定からは、マイクロファセットモデルが正しいとしても、モデルがもつGeダイマー列は存在しないことがわかった。一方STM観察から、ナノワイヤ頂上の原子配列を明らかにした。ナノワイヤ平行方向に下地ユニットセルの8倍周期の構造があることを明らかにした。これに対応して、異方的2次元金属状態の電子状態密度も8倍周期を示すことと、ワイヤ垂直方向にも広がりがあることがわかった。これが電子状態の2次元性に寄与していると考えられる。これに関連して、Au/Ge(111)√3×√3表面の電子状態を角度分解光電子分光(ARPES)で調べた。4つの金属的なバンドがあり、2つはホール的、2つは面内の対称性をもつ電子的バンドであること、また第一原理計算で求めたバンド構造との比較により、電子的バンドはフェルミレベル直下でラシュバ型のスピン分裂を示すことを明らかにした。
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