2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲルマニウム基板上に構築した金属ナノワイヤ構造とその電子物性
Project/Area Number |
22710095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中辻 寛 東京大学, 物性研究所, 助教 (80311629)
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Keywords | 表面・界面物性 / ナノ構造物性 / 低次元系 / 表面電子状態 / 角度分解光電子分光 / 走査トンネル顕微鏡 / ゲルマニウム / 金 |
Research Abstract |
本研究ではGe(001)表面にAuを1原子層程度蒸着して形成されるナノワイヤ構造の電子物性を明らかにすることを目的とした。昨年度までにこの系が異方的2次元金属バンドをもつことが分かっていたが、ナノワイヤに平行又は垂直のどちらに電気伝導しやすいかは不明のままであった。そこで23年度は、微傾斜(001)基板を用いてナノワイヤ構造のシングルドメイン試料を作成し、走査トンネル顕微鏡(STM)観察および角度分解光電子分光(ARPES)測定することで、電子状態の異方性とナノワイヤ構造の相関を明らかにした。まずSTM観察で、シングルドメイン試料の形成条件を明らかにした。次にARPES測定で、異方的2次元金属バンドの有効質量が小さい(電気伝導しやすい)方向が、ナノワイヤに平行ではなく垂直方向であることを明らかにした。ワイヤ方向に伝導しやすいという予想と異なっており、電子状態を正確に評価することの重要性を示す結論となった。一方Au/Ge(111)√3×√3表面についてのSTM観察を行うと、1原子層以下ではAu吸着領域に一定割合の三角形構造(欠陥)が観察されたが、Auの平均膜厚が1原子層を越えるとその数が急激に増加した。これはARPES測定した金属バンドの結合エネルギーが、Au1原子層以上で急激に高エネルギー側にシフトすることに対応しており、この欠陥構造が金属バンドに対する電子ドナーであり、バンド内の電子数を制御できることが明らかになった。また、Ge(111)面についても微傾斜基板を用いて新しい1次元構造の形成を試み、ステップに平行方向に延びる1次元鎖構造が形成されることを明らかにした。ARPES測定からは金属的なバンドは見つからなかったものの、この構造由来のバンドが1次元鎖平行方向に有効質量の小さい異方的2次元バンドであることを明らかにした。
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