2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属クラスターと半導体界面における光電荷分離に基づく光機能デバイスの開発
Project/Area Number |
22710100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 伸行 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70431822)
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Keywords | 金属クラスター / 半導体 / 光電荷分離 / 光電変換 / 光触媒 |
Research Abstract |
直径が2 nm以下の金属クラスターは、ナノ粒子やバルクの金属とは異なり、離散的な電子構造を持ち、可視域~近赤外域に特徴的な光吸収を示す。本研究では、金属クラスターを光増感剤とした色素増感太陽電池や可視光応答型光触媒、光磁気メモリなどの光機能デバイスの開発を目的とする。平成23年度は、Au以外の金属クラスターを増感剤に用いた酸化チタン電極の光電変換特性の評価と、新規金属クラスターの合成について検討した。 Auのほか、比較的安価なPdや安定で触媒活性の高いPtのクラスターを合成し、それらを用いた光電変換について検討した。メルカプトコハク酸またはジメルカプトコハク酸に保護されたPtクラスターやPdクラスターも光電変換に応用でき、同じ保護剤のAuクラスターよりも高い特性が得られた。また、PtクラスターやPdクラスターはヨウ素系電解液に対する安定性がAuに比べて高く、それを用いることにより光電変換特性を向上できた。Au以外の金属クラスターへの展開は低コストで安定性の高い光電変換デバイスや活性の高い光触媒などの光機能材料の開発につながると期待できる。 新規金属クラスターの合成では、グルタチオンに保護されたAu以外の金属元素(Ag、Cu、Pt、Pd)のクラスターを得ることに成功しているが、グルタチオンと金属塩のモル比により平均サイズを制御した金属クラスターを合成できた。サイズの増加に伴い吸収端が長波長シフトし、量子化された電子構造を有することを明らかにした。さらに、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりCuクラスターを構成原子数に応じて分離することに成功し、CuクラスターもAuやAgと同様に魔法数クラスターが存在することを明らかにした。この成果は金属クラスターを増感剤に用いた光電変換デバイスや可視光応答型光触媒の低コスト化につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Au25クラスターを担持した酸化チタン電極で見いだされた、金属クラスターを増感剤に用いた光電変換特性や光触媒活性が、サイズの異なるAuクラスターや、PtやPdなどの他の元素の金属クラスターでも得られることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Au25クラスターによる光電流生成は内部量子収率は60%と高い値が得られているが、外部量子収率は10%程度しか得られていない。これは、Au25クラスターによる光吸収が弱いためである。そこで、光吸収の強いAgクラスターについて検討したり、Auナノ粒子のプラズモン共鳴に基づく強い光吸収を利用したりするなどして、外部量子収率の向上に取り組む。
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