2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノポアDNAセンサーの実用化に向けてナノポア付近のDNA泳動制御
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22710117
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
三井 敏之 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (40406814)
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Keywords | ナノバイオ / 生物物理 / マイクロ・ナノデバイス |
Research Abstract |
DNAや生物機能に関わる分子とナノテクノロジーを用いて人工的につくられたナノポアやナノチャネルなどの微小空間内に局所化し、それらの分子の物理的特性を解析することを目的とする。現在、この手法では、イオン電流を情報源としているが、それだけでは得られる情報に限りがある。また、DNAはポアに詰まりやすく、一度詰まると、ポアは使い物にならなくなる。そこで、ポアに電極を作ることを目的として、その第1段階として、平成22年度より、ポア膜を導体にし、その導体の電位を制御することにより、DNAの電気泳動の変化を観測し、ポアのまわりに形成される電場の見積りを行っている。ポアの種類は、SiN+Au膜と、SiN+Au+SiO膜とで、それぞれ、精度よく、3Dの電場プロファイルをDNAの泳動から見積もれた。特に23年度は、測定の精度を上げることができ、結果として、DNAが表面付近を通ってポアに侵入するパラメーターと、ポア膜に対して、垂直に侵入するパラメーターを決定できた。また、ポアに銀粒子を付着し、ラマンの表面増強を観測する実験においては、ポアに詰まったDNAのラマン測定に成功し、銀粒子による増強も確認されたが、ポアの位置だけからのラマン増強はまだ得られてない。また、増強度もシングルDNAのスペクトルを得るほどではない。ポア内の銀粒子の密度が低いことが原因で、これは次年度の課題である。 次にDNAがポアに詰まる確率を見積もった。驚くべきことに、ポアの両端に印加する電位差が大きいほうがポアに詰まりやすいことを発見した。これは直観に反し、詰まったDNAは、ポア内の電場だけでは、取り出せない。そこで、導体のポアを用い、その導体にパルス電位をかけ、その影響を調べたところ、DNAを完全に取り出せるパルス幅とその周期を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラマン増強のためのテンプレート作りに関する研究に関してはやや遅れているが、DNAの泳動の解析から電場の見積もり、詰まったDNAの除去のための手法の発見など、おおむね順調に進展している。理由は、世界的に行われているナノ粒子によるラマン増強の研究自体が、state of artで、コンシスタントな結果が得られていないこともあり、ナノボアを用いた実験においても、増強度が1分子DNA程度でも観測できるところまで原理的に上がるのかもわかっていない。シミュレーションを行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマン増強のためのテンプレート作りに関する研究に関しては、ボアの周りの電場のシミュレーションを行う必要がある。複数のナノ粒子間にてラマン増強が予測されているが、ボア内にナノ粒子が固定されている場合の増強度は不明である。上記で説明した導体のボアを用いて、ラマン増強度を調べる。導体を用いたボアについては、AuとSiNの間のバッファー層をCrからTiに変えて実験を行う。Crは電極に与える電位差に限界を与え、パラメーターを大きく振れない。そこで、今年度はTiにて実験を遂行する。
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