Research Abstract |
本年度の研究では,企業の財務指標をリスクを勘案して計測する理論モデルの構築とそのモデルを用いた実証研究を行った.具体的な研究業績は,学術論文5編,学会発表2回および研究セミナー発表1回,書籍1編に集約される. まず学術論文では,Shibata and Nishihara (2010)において,企業の所有者と経営者の間で生じる情報の非対称性が,企業のプロジェクト評価式にどのような影響を及ぼすかについて分析した.Nishihara and Shibata (2010)では,企業間の競争と企業の資金制約がどのように投資行動に影響を及ぼすかについて考察し,企業の株式や負債価値に関する理論的な評価式を導出した.Shibata and Tian (2010)では,企業の業績が悪化した場合における再生スキームといった最適再生戦略を考察し,その最適戦略下での企業の株式や負債価値に関する評価式を導出した.Shibata and Yamazaki (2010)では,電気通信産業の複占市場における企業の投資プロジェクトに関する評価式を導出した. 次に,学会報告では,7月にポルトガルのリスポンで開催された欧州オペレーショナルリサーチ学会,9月にドイツのミュンヘンで開催された国際オペレーションズリサーチ学会において,企業の潜在的財務指標を計測する理論モデルについて研究報告を行った.また,King's College Londonの数学科におけるFinancial Mathematics and Applied Probability Seminarにて,Shibata and Nishihara (2010)を発表した. 最後に,Tian, Nishihara, and Shibata (2010)では,M&Aのシナジー効果を考慮に入れた上で,企業の株式や負債価値を計測する理論モデルを導出した.なお,この論文は書籍Recent Advances in Financial Engineering (World Scientific社)に所収されている.
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