Research Abstract |
本研究は,在庫管理に内在する離散凸構造を精査し,離散凸構造に着目した効率的な最適化手法を開発することにより,既存の在庫管理手法よりも精度の高い管理と,より多くの情報を扱える在庫モデルへの対応を実現することを目的としている. 本年度は,これまでの,離散凸解析理論を在庫管理分野に応用した研究をまとめ,国際シンポジウムにおいて発表を行った.また,最適化アルゴリズムの性能向上を目指し,離散M凸関数の最小化における連続緩和アプローチと,このアプローチの効率の良さを保証する近接定理に関する研究を論文に発表した. さらに,本年度の当初の目的であった「混合整数計画の拡張である連続/離散ハイブリッド凸性による拡張モデルの研究を,現実世界の要請を反映させながら離散凸性を保持するモデルとしてどこまで一般化できるか」について,体系的な究明に取り組んでいった中で,離散変数関数の凸拡張可能性とヘッセ行列の離散版である「離散ヘッセ行列」の関係について精査する必要があると判明した.凸拡張可能な離散関数と離散ヘッセ行列の関係及びその離散最適化への応用については,近年,他の研究者による試みがなされているものの,曖昧な議論による混乱が見受けられ,理論的整備が必要であったので,本年度の研究により,離散ヘッセ行列の半正定値性と離散変数関数の凸拡張可能性を明らかにした.具体的には,離散関数の凸拡張可能性から,その離散ヘッセ行列の半正定値性が導けないこと,さらにその逆で,離散ヘッセ行列の半正定値性から離散関数の凸拡張可能性が導けないこと,について,半正定値計画問題等を用いて例示し,離散凸解析におけるM凸性,L凸性からは,離散ヘッセ行列による特徴付けが導けることを整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的を実現するために,新たな課題として,凸拡張可能な離散関数と離散ヘッセ行列の関係を精査する必要が生じたが,この課題もすぐに解決でき,結果をまとめることに成功したため,当初の計画に大きな影響を及ぼさなかった.したがって,おおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
在庫管理における需要と供給のバランスについて,待ち行列理論と離散最適化理論の融合により,その定常状態の振る舞いを整理し,まとめる.離散凸最適化について,これまで理論的に多項式時間保証ができるクラスに着目して,無制約離散凸関数最小化に取り組んできたが,本年度は,現実のモデルからの要請により,制約付き最小化問題についても研究していく.一般的に,線形制約付きであっても,NP困難性が導かれるクラスであるが,現実的に求解可能なクラスとその方法を,構成的アプローチで解明していく.ソフトウェア開発において,利用する離散凸最適化ソルバーは,自らその開発,公開拡張に取り組んできたソフトウェア,ODICONに基づくものとする.
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