Research Abstract |
近年,政府統計の二次利用に向けた制度整備が進展しつつあり,我が国の住宅研究においても,政府統計の個票データを用いた分析の展開可能性を模索することが期待される. 2011年度は,昨年度からはじめた住宅・土地統計調査を用いた分析を継続して進め,2011年9月に総務省統計研修所リサーチペーパー第28号として「住宅・土地統計調査から見る住宅耐震化の趨勢」をとりまとめた.具体的には,住宅や世帯,住宅耐震化の動向を整理した上で,耐震診断や耐震改修工事と住宅,世帯,地域の関係性を分析した.持家住宅の耐震診断結果を見ると1981年の建築基準法改正以降でも,耐震性能が不足している比率が高い場合があることや,長期地震発生確率が高い地域で,耐震性能が不足している住宅が多いが,耐震改修工事は十分に進んでいない傾向が見出された.また,都道府県や市区町村によって,耐震化率と,新設住宅比率や耐震改修実施率等の関係性が異なっていること,さらに,全体的に耐震化率が低い都道府県では,耐震化率が低い市区町村で耐震改修工事が少ない傾向が見られるなどを見出した. 本研究実施期間に,東日本大震災が発生した.東日本大震災後の被災地の社会調査を見ると,住宅ローンを抱えたまま被災された方が少なくなく,生活者の目線から我が国の住宅のリスクを考えていく上で,住宅金融の問題は避けて通れないものと考えるに至った.そこで,2011年度は,政府統計の個票データを用いた住宅研究の展開可能性模索の一環として,住宅ローンについて扱いがある全国消費実態調査を用いた分析を行い,別に実施されたインターネット調査を,全国消費実態調査と傾向スコアを用いて補正推計する方法,補正推計したデータを用いて家計へのストレスが返済へ与える影響を分析する方法などを検討した.
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年度も総務省統計研修所との共同研究を継続し,分析作業を継続できる体制を整えたので,引き続き作業を進める.具体的には,住宅・土地統計調査を用いたこれまでの分析作業に調整を加えて,学術論文を執筆投稿する予定である.また,住宅についても扱いがある全国消費実態調査の個票データも利用して,家計と住宅状況の関係分析も加え,住宅の防災・復興政策の検討につなげる.
|