2011 Fiscal Year Annual Research Report
自然発生的船舶交通流中における避航操船特性に関する研究
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22710169
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
西村 知久 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 准教授 (30559240)
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Keywords | 安全工学 / 避航操船 / 航行管制 / 航行環境 / 操船シミュレータ |
Research Abstract |
平成22年度に査した東京湾沖(洲崎付近)において自然発隼している船舶交通流の実態調査を基に、同海域において発生している典型的な船舶交通流を操船シミュレータ内に再現し、外航商船に乗務経験を有する船長.航海士に模擬操船実験を実施させた。この操船結果とInternational Marine Simulator Forum(IMSF)参加機関(オランダ、ドイツ、韓国、ベトナムなどの海事大学に設置されている操船シミュレータ訓練センター)が実施したランダムな船舶交通中における避航操船実験結果とを比較した。なお、申請者及びIMSF共に、自船が避航船となるシミュレータ実験を実施している。 申請者が実施したシミュレータ実験では、自船とターゲット船との針路交差角度が60度であったため、これと同等のIMSFの結果を抽出して比較したところ、次のような結果が得られた。 (1)船舶の発見については、両者において、顕著な差は見受けられなかった。 (2)危険認識時機、避航開始時機については、IMSFの結果に比べ、近距離に接近するまで行動が現れない傾向が見られた。 (3)避航開始時機の遅れに伴い、申請者が実施した実験では自船の長さ以内まで他船と接近(ニアミス)する結果となったが、IMSFでは自船の長さの10倍以内に他船が接近することはなかった。 以上の結果から、特段の航行管制が敷かれていない海域において、自然に船舶交通流が発生している場合は、たとえ自船が避航義務を有する船舶であったとしても、相手の船舶がその交通流に沿って運航するものと自船操船者が憶測することにより、法律に則った避航行動を取らなくなる傾向があることが確認された。 本検証実験に類似した海域においては、航行環境が改善されない限り、避航判断の遅れは減らず、ひいては航法不遵守を原因とした衝突海難事故の大幅な減少は期待できないものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海技従事者による操船シミュレータ実験を実施し、自然発生的船舶交通流中を航行する船舶に対する避航操船行動特性と一般的な海域における避航操船行動特性との差を明確にすることができたため。また、このような海域における航行安全対策に関する課題を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
地形や重要港の存在等により、整流されていない船舶交通流が発生している海域における航行安全対策としては、当該船舶交通流を人為的に管制することが一つの方策として考えられる。よって、今後は航行管制に着目する。 海技従事者に対する聴き取り調査を実施し、航行管制に対する海域利用者の要望を明らかにすると共に、海上交通センターに赴き、航行管制業務を実施している運用管制官の技能について調査し、沿岸域における航行管制の在り方について検討する。
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