Research Abstract |
R素子を用いた熱流計測装置を試作した.本試作機は,基本性能の確認と,未知の課題点を洗い出すことを目的とし,室内での使用(実験など)を前提とした簡易的なシステムである. 本装置は,R素子を4枚組み合わせたセンサ部分に熱伝対を埋め込んであり,装置への負荷を電気的に自動調整することで,冷却面温度を一定に保つことができる.このとき,冷却面の反対面に相当する放熱面から,効率的に熱を逃がす必要がある. 本年度の中心的課題は,R素子を効率的に冷却させることであった.しかし,実際の噴気地の熱流量を想定した場合,自然放熱だけでは熱を逃がしきれない,すなわち冷却面温度を想定温度に保てない噴気地が存在することがわかった. R素子の冷却方式として,通常,水冷式と空冷式が用いられている.水冷式を採用した場合,ほとんどの噴気地において十分な冷却性能が得られるものの,移動観測,自動観測という目標を達するには,装置が複雑過ぎて困難であることが分かった.空冷式は,装置全体の簡便性・軽量性が確保できるばかりでなく,現実の火山噴気地で予想される熱流量範囲を広くカバーできることが分かった.ただし,冷却のために取り込む外気に,水滴,すなわち周辺の噴気に由来する湯気が,熱流計測の誤差要因として無視できない場合が生じるらしい.これは,吸気口の幾何学的形状を工夫すること,周辺で同時実施する気象観測データに基づいて影響を評価することで対処とした. また,精密機器を腐食性火山ガスから保護する仕組みとして,フッ素コーティングと吸湿剤を組み合わせることの有効性を,実際に温度計測装置を火山地熱域に置いてテストすることで確認した. 以上のように,いくつかの課題に直面しながらも,最終的な計測システム像が固まりつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置設計を進めた結果,装置からの放熱機構および装置のエネルギー収支を正しく測定することが本年度の中心的な課題となり,基本設計に変更を加える結果となった.これら課題は解決に向かっているものの,当初目的として掲げていた野外観測に適用可能なシステムの構築には至っていないことから,やや遅れていると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
実現可能な機器性能が概ね確定したので,測定精度を実験的に確認するとともに,野外観測に適した筐体およびデータ収録システムを構築する.この最終的な観測装置を用いて,草津白根火山や箱根火山を対象としてテスト観測を行なう.また,地温や気温などとの同時観測により,得られた値が実際の火山活動や気象要因とどう関係があるのかを検証する.また,噴火が懸念されるような火山が生じた場合は,そこに装置一式を設置して,データ取得を試みる.
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