2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化に伴うへテロクロマチン領域形成のゲノム学的手法による機能解析
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22710183
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
酒井 晶子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (70532745)
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Keywords | ChIP-seq / ゲノム / 発現制御 / クロマチン |
Research Abstract |
クロマチン構造は転写制御に重要な役割を持ち、細胞の状態変化とともに再構築され得る。本研究では加齢に伴うクロマチン構造再編成の分子機構とその役割の理解を目的として、コヒーシン複合体、およびHP1等、クロマチン構造の構築に必須な因子に着目し、ほ乳類の脳においてこれらの因子のゲノム上の結合位置を網羅的に同定することを試みている。 平成23年度は、主な手法であるChIP-seq法(クロマチンタンパク質と共に免疫沈降したDNA断片の塩基配列を直接決定することでタンパク質結合プロファイルを解析する方法。繰り返し配列も含めて全染色体領域の解析が可能。)を行うにあたり、系の確立に取り組んだ。ChIPの出発材料となるマウス脳の可溶性クロマチンを均一に得るために、バッファー条件、超音波処理による断片化の条件を詳細に検討した。その結果、コヒーシンのChIP-qPCR(定量的PCR法)により、既知の結合領域とコントロール領域で最大9倍の差が検出される条件を見出した。これまでChIP-seq法は主に培養細胞で行われてきたため、マウス脳からのChIP法の確立は、広く個体のクロマチン解析に応用され得る点で意義深い。 また、脳内には神経細胞とその他の細胞が混在しているため、フローサイトメトリーを用いて神経細胞核とその他の細胞り核を分離する方法も確立した。これにより、神経細胞特異的なクロマチン構造の解析が可能となった。 今後、本年度に確立した系を用いて若いマウス個体と成熟個体それぞれの脳よりChIP-seq解析を行い、加齢によりクロマチン因子の結合領域がどのように変化するのかを解析することで、クロマチン再編成の分子基盤を明らかにしていく。これらの解析結果から、加齢により脳の可塑性が変化していく分子機構の一端が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属研究機関・所属研究室の変更に伴い、研究に用いる材料をヒト培養細胞からマウス脳に変更したため、改めてChIPの条件検討として予備実験を重ねる必要があり、平成23年度中にChIP-seq解析を行うには至らなかった。一方で、マウス脳より神経細胞核を単離する手法を新たに確立した点では、より精度の高い結果を得るための準備が整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度中に行った条件検討の結果に基づき、若いマウス個体と成熟個体それぞれの脳を用いて、コヒーシン、HP1アイソフォーム等のクロマチンタンパク質に関してChIP-seq解析によりゲノム上の結合位置を網羅的に同定する。加齢により結合領域がどのように変化するのかを解析することで、クロマチン再編成の分子基盤を明らかにしていく。また、それぞれの脳における遺伝子発現プロファイルを解析し、クロマチン構造変化と遺伝子発現制御の相関を明らかにする。さらに、コヒーシンおよびHP1を欠損したマウスにおいて遺伝子発現プロファイルの変遷にどのような影響を与えるかを調べることにより、クロマチン再編成が遺伝子発現制御に果たす役割を明らかにする。
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