2010 Fiscal Year Annual Research Report
動的レジーム理論に基づく植生管理のための生態学的研究:浅い湖沼を対象として
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22710232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西廣 淳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (60334330)
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Keywords | レジームシフト / 湖沼 / 水質悪化 / 発芽特性 / 土壌シードバンク / 浮葉植物 / 三方湖 / 印旛沼 |
Research Abstract |
福井県三方湖はラムサール条約登録湿地(三方五湖)に含まれる生物多様性保全上重要な淡水湖である。三方湖では近年、浮葉植物ヒシが急増している。特に2008年以降は、三方湖の湖面のうち、汽水湖である水月湖と接続している湖の下流部および流入河川の河口部にあたる上流部を除く、湖面の約60%がヒシに占有されるようになった。ヒシの繁茂は水中溶存酸素の低下を通して動物相・量に影響するほか、船の航行障害にもなるため、地域ではヒシの駆除管理が開始されている。本研究では、三方湖内のヒシの空間分布に影響する要因を検討した。 三方湖内に10点の調査地を設け、それぞれにおいて船上から鋤簾を用いて一定面積の底質を掻き取ることよりヒシ種子を採集し、種子密度と発芽動態を調べた。その結果、前年にヒシが繁茂していた場所では、発芽期前の3月には31-63個/m^2の種子が底質中から検出されたが、ヒシの繁茂が認められなかった湖の上流部および下流部では種子は検出されなかった。 近年におけるヒシの繁茂が認められない下流部と上流部、および高密度な繁茂が認められる湖心部の湖底に、2010年3月に休眠解除処理をした種子をメッシュバッグに入れて設置し(45種子/地点)、発芽終了期にあたる6月上旬に発芽/休眠/死亡種子の割合を調べた。その結果、頻繁に汽水が侵入する下流部では設置した種子の80%が発芽後に死亡していた。一方、上流部では76%が発芽・展葉し、これは湖心における発芽率(51%)よりもむしろ高かった。 ヒシの繁茂を抑制している要因は三方湖内の地点によって異なり、上流部付近では種子の供給の不足が、下流部付近では、種子供給の制限に加え、汽水の流入による実生の死亡が主要な要因となっていることが示唆された。
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Research Products
(15 results)