2011 Fiscal Year Annual Research Report
動的レジーム理論に基づく植生管理のための生態学的研究:浅い湖沼を対象として
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22710232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西廣 淳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (60334330)
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Keywords | 浮葉植物 / 湖沼 / リモートセンシング |
Research Abstract |
湖沼における浮葉植物の分布範囲の長期的な変化を把握するため、人工衛星リモートセンシングを用いる方法を検討し、三方湖(福井県)における浮葉植物ヒシの増加がいつ頃から生じたのか検討した。現地調査と人工衛星リモートセンシングデータの比較の結果、リモートセンシングデータから算出された標準化植生指数(NDVI)が、10×10m2の範囲におけるヒシの密度と有意な正の相関をもつことが確認された。これを根拠として、リモートセンシングデータから算出したNDVIから、2003年から2010年までの各年におけるヒシ個体数を推定した。その結果、三方湖におけるヒシの分布は、2005年まで湾部の湖岸付近に局在していたものの、2006年から2007年にかけて湖心付近にまで分布を拡大し、2008年からは広範囲の湖面を覆うようになったことが明らかになった。 三方湖においてこれまで福井県により測定されてきた水位のデート評価した結果、ヒシの分布範囲が急速に拡大した時期においても、水質に顕著な変化は認められなかった。近年におけるヒシの急増は、富栄養化などの水質変化が閾値を越えたことによって生じたわけではないことが示唆された。また湖沼の水位とその変動パターンについても、特にヒシの個体群サイズに影響するような変化は認められなかった。 現地調査の過程で、ヒシの生育範囲は底質の粒径が細かく、同じ湖内でもヒシの非生育範囲では粒径が比較的粗いことが示唆された。底質の状態は、ヒシの生育に影響する可能性がある。すなわち、軟泥質で溶存酸素濃度の低く光が不足しがちな底質環境は、多くの沈水・浮葉植物の生育にとって不適だが、種子サイズが顕著に大きいヒシでは、初期成長の資源量が多いため、光不足などによる悪影響を受けにくい可能性があるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象地を当初の計画の範囲よりも縮小したが、目的に適う結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
湖沼における浮葉植物の急増がいわゆるレジームシフトに相当する現象なのか、環境変化に対する連続的な反応なのか詳細に吟味し、結果の一般性を検討する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] A study on seed dispersal by flood flow in an artificially restored floodplain2011
Author(s)
Hayashi, H., Shimatani, Y., Shigematsu, K., Nishihiro, J., Ikematsu, S., Kawaguchi, Y.
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Journal Title
Landscape and Ecosytem Engineering
Volume: (掲載確定)
DOI
Peer Reviewed
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