2011 Fiscal Year Annual Research Report
河川地下に潜伏する無脊椎動物:河床間隙水域は干上がりからの避難場所か?
Project/Area Number |
22710237
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
三宅 洋 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 講師 (90345801)
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Keywords | 河川 / 大型無脊椎動物 / 干上がり / 避難場所 / ハイポレオス / 生態系保全 / 河床間隙水域避難場所仮説 / 時間的・空間的変異 |
Research Abstract |
本年度は,前年度に引き続き,河床間隙水域避難場所仮説の検証および無脊椎動物各種における河床間隙水域の利用能力の評価に関する調査を実施した. 調査対象河川(愛媛県重信川)の間欠区間内から代表的な淵を6箇所選び,調査地とした.これらの調査地で,平成23年10月までの1年間に,1ヶ月おきに河床間隙水域および表流水域において大型無脊椎動物およびその生息場所環境に関する調査を行った.さらに,出水撹乱および低水撹乱(干上がり)が発生した直後に同様の調査を行った. 調査の進行にともない,採取した各種サンプルの処理を,実験補助を雇用することにより実施した.これらサンプル処理と現地調査における環境計測により得られたデータの処理を実施し,予備的な統計解析を行った. この結果,表流水域に生息する無脊椎動物(ベントス)の総生息密度は出水撹乱および低水撹乱が発生した際に,いずれも個体数が減少することが明らかになった.一方,河床間隙水域に生息する無脊椎動物(ハイポレオス)の総生息密度は,出水撹乱時には減少するものの,低水撹乱時には増加していた.これらの結果は,無脊椎動物は低水撹乱時にのみ河床間隙水域を避難場所として利用することを示唆していた.また,このようなパターンは河床砂礫の間隙率が高い2箇所の淵において顕著であった.さらに,ベントス群集の安定性(量的安定性,群集構造の安定性,存続性)はこれらの淵において高かった. 以上の結果は,河床間隙水域避難場所仮説を支持するばかりではなく,本研究の成果が仮説が支持される条件と河床間隙水域の長期的な安定性への貢献度合いを解明しうることを示唆している.今後もサンプル処理,データ処理・解析を進めることにより,河川生態系保全における河床間隙水域の重要性の評価が可能になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時または年度当初の研究実施計画と比較して,調査の実施,サンプル処理,データ処理・解析の全てが計画以上に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,追加的なサンプル処理を実施するとともに,データ処理・解析を進め,申請時に提示した研究目的を達成する.データ解析においては,無脊椎動物の群集構造に注目するとともに,群集を構成する各分類群の生息密度変動パターンを詳細に解析し,各分類群における河床間隙水域の利用能力の評価を行う.これらの結果をとりまとめ,国外・国内学会で適宜発表するとともに,複数の国際誌へ論文を発表することを目指す.
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Research Products
(8 results)