2010 Fiscal Year Annual Research Report
阿寒湖マリモの保全に向けた遺伝的多様性解析のための技術基盤の確立に関する研究
Project/Area Number |
22710239
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
西沢 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, NIESボスドクフェロー (80414382)
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Keywords | マリモ / 遺伝的多様性 / 個体群復元 / 分子マーカー / 阿寒湖 |
Research Abstract |
1.湖内個体群間の識別を目的とする分子マーカーの開発 マイクロサテライト領域の単離を行い,マーカー化の検討を行った。しかしながら,安定的なPCR増幅が得られる遺伝子座では変異が認められず,今年度内には多型的な遺伝子座の捕捉には至らなかった。一方,White et al. (1990)やHanyuda et al. (2002)で設計されたITS領域を増幅するプライマーを用いて,阿寒湖内の各水域から採取したマリモを対象にITS領域の塩基配列を決定した。その結果,5パターンのハプロタイプが認識された。次年度以降も,引き続き多型的なマイクロサテライト遺伝子座の探索は実行する一方で,阿寒湖内のマリモ個体群は極端に遺伝的多様性が低いことが予想されることから,ITSをはじめ,他のDNA領域を対象に一塩基多型(SNPs)マーカーの開発も次年度以降は視野に入れるものとする。 2.細胞遺伝学的手法による藻体の核相判別 阿寒湖マリモの糸状体を材料に,フローサイトメトリー(FSM)による核DNA量の定量を行った。球状体マリモは複数の糸状体が纏まりあった,別個体由来の糸状体集合と考えられることから,実体顕微鏡下で集合体マリモを分解し,長さ約5cmの糸状体1本を選別して1検体とした。10検体の定量を行ったが,長さ約5cmの糸状体1本では細胞数が少なく,核相の判別を可能とする精度でDNA量の定量を行うことができなかった。FSMによる定量を行うためには,微量の糸状体1本を純粋培養によって成長させ,十分な量の細胞数を確保するステップが必要である。
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