2011 Fiscal Year Annual Research Report
阿寒湖マリモの保全に向けた遺伝的多様性解析のための技術基盤の確立に関する研究
Project/Area Number |
22710239
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西沢 徹 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (80414382)
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Keywords | マリモ / 遺伝的多様性 / 個体群復元 / 分子マーカー / 阿寒湖 |
Research Abstract |
1.マリモ試料の収集とDNA検体の準備 昨年度以前に採集しておいたマリモ藻体や,釧路市教育委員会が阿寒湖エコミュージアムセンターにおいて管理しているコレクションからマリモ試料の分譲を受け,複数の個体群からマリモ試料を収集した。また,球状体にとどまらず,様々な生活史型の藻体も収集した。集合体マリモは複数個体由来の糸状体が絡み合って1つの藻塊を形成しているため,遺伝解析の際には単一個体由来の精製DNAでPCRを行う必要がある。今年度は,僅かな糸状体1本から精製されたDNAを鋳型とするPCRにおいて,最適反応条件を検討し,糸状体1本からでも安定したPCR増幅が行える条件を整備した。 2.湖内個体群間の識別を目的とする分子マーカーの開発 精製された糸状体1本由来のDNAを対象に,昨年度までの研究で変異が認められた核のITS領域を対象に多型解析を行った。その結果,4パターンのハプロタイプが認識された。このうち3ハプロタイプは,従来までの研究では報告がなかった新たな変異であった。しかしこれまでのところ,これらの4つのハプロタイプは,阿寒湖内の個体群間(マリモの生育地点)やマリモの生活型との間で明瞭な対応関係は確認できず,湖内個体群間の遺伝的差異を記述するためには十分な解像度が得られなかった。 また,昨年度から開発を進めているマイクロサテライマーカーも,まだ十分な多型が捕捉できていない。最終年度も引き続いてマーカー開発を進める。この際には平行して,一塩基多型(SNPs)の変異についても,湖内個体群間の差を記述できるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
阿寒湖内の各個体群および釧路市教育委員会が阿寒湖エコミュージアムセンターにおいて管理しているコレクションからマリモ試料の分譲を受け,阿寒湖および国内各地のマリモDNA検体の収集が進んでいる。またそれらを対象とした微量試料からのDNA精製方法や最適PCR条件の整備が整った。また,核のITS領域に阿寒湖内個体群間で遺伝的多型を確認し,マーカー化に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
核のITS領域において,湖内個体群間でマリモの遺伝的多型を捕捉し,遺伝的変異に基づく個体群の類別化を試みているが,ITSの変異だけでは個体群間の遺伝的差異を記述する上で十分な解像度が得られていない。昨年度に引き続いて今年度もマイクロサテライトマーカーの開発を重点的に行い,湖内個体群間の差異を検出できる十分な解像度を備えた分子遺伝マーカーの開発に取り組む。
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