2011 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期のアメリカにおける文化外交政策と社会運動の相関-音楽を中心に
Project/Area Number |
22710244
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
舘 美貴子 千葉大学, 千葉大学, 准教授 (60376580)
|
Keywords | アメリカ / 音楽 / 文化外交 / 冷戦 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、冷戦期におけるアメリカ合衆国の文化外交政策と、同時期の国内における社会運動の双方において、音楽がどのような役割を果たしていたのかについて比較検討し、その関係を探ることにある。文化外交、社会運動の担い手となった音楽家の経験や思想を解読し、彼らが音楽を通してどのようなアメリカ像を発信したのかを明らかにし、それが国内外の受け手にどのように受容されたのかを解明することを目指している。 平成23年度においては、米国での文化外交と社会運動に関する文献および同時期の政治に関連した音楽についての資料を、主に二次文献を中心に収集し分析を進めた。冷戦期の米国文化史に関する研究だけではなく、音楽と政治の関係性に関して、音楽学や社会学、文化人類学、政治学など多岐にわたる分野で行われている研究を広く視野に入れ、論文集やモノグラフなどの講続を通して、理論化の参考とすると同時に学術界での位置づけを明らかにした。このように米国に関する研究については、主に二次文献を収集・整理したが、冷戦期における米国の大衆文化とその海外における受容に関しては、日本を中心として一次資料を収集して分析することができた。特に、1960年代における米国の音楽とそれに関連した大衆文化の日本における受容に関しては、当時の雑誌・新聞記事や当事者の手記、その他の出版物などの一次資料をもとに、米国において反体制的な政治主張を基盤とする音楽が対極とも思われる意味を持って受容された過程を明らかにした。結論の重要な点は、音楽を含めた文化的生産物の意味の不透明性であり、明示的な主張を持つ生産物であっても、受け手により異なった解釈が与えられることであった。またその違いは恣意的なものではなく政治的な意味を持つものであることも明らかになった。研究成果に関しては、国際会議の場などで研究発表を行い、海外の研究者との意見交換を通して議論を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度の途中から一時研究中断があったため、平成23年度はその続きを行った。米国における文化外交と社会運動に関しては、当初予定していた米国での一次資料収集は次年度に回して、二次文献を主に扱い一定の成果をみたが、日本を中心とする海外での受容に関しては一次資料の分析を含めて研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で、冷戦期の政治と音楽との関係性に関する研究と、文化外交史および社会運動の概要とが明らかになったので、次年度では、一次資料に重点をおいて、実際に文化大使として国外で活動を行ったアメリカ人音楽家を個別に取り上げ、彼らの回顧録や自伝、活動記録などの資料を一次資料としてより詳細な研究を進めてゆきたいと考える。また、日本を中心とする米国冷戦文化の海外における受容に関しては、引き続き研究を発展させ、国際会議での研究発表などを通して、さらに考察を深めてゆきたいと考える。
|