2011 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア産アナツバメ類の持続可能性に関する景観生態学的研究
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22710251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 素子 京都大学, 東南アジア研究所, 特定研究員(グローバルCOE) (50456828)
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Keywords | 景観生態 / 食性解析 / 安定同位体 / 資源利用 |
Research Abstract |
食用ツバメの巣としての過剰採集により,アナツバメ類の個体群は激減した.特にマレーシア・サラワク州の景観は,近年急激にアブラヤシやアカシア植林地へと開発が進んでおり,アナツバメ類の採餌環境は悪化していると考えられる.本研究では,東南アジア地域の重要な産業基盤であるアナツバメ類の巣の持続的な利用を最終的な目的としており,本年度は土地利用と採餌特性の関係を明らかにすることを目標として調査研究を行った.特に,都市部・田園地帯の個体群において,採餌する餌の構成比の違いと,餌を採餌した土地利用環境に着目した.対象種は,最も経済的価値が高いEdible-nest Swiftlet (Aerodramus fuciphagus fuciphagus)とした. マレーシア・サラワク州における現地調査では,クチンとビントゥルの2つの地域で,アナツバメの巣を養殖するための人工的なハウス10件において,ツバメの糞のサンプリングを行った.また,鳥の個体群特性の指標として,巣の生産量についてツバメハウスのオーナーへの聞き取りを続けている.実体顕微鏡を用いて糞のなかで粉砕されずに残っている昆虫の頭部のみをより分け同定した結果,昆虫の頭部の5割以上は膜翅目(アリ)であることがわかった.そのほかに,双翅目や甲虫目などがみられた.また,糞の炭素・窒素安定同位体比を用いた分析からは,都市部のツバメ糞の炭素同位体比が田園地帯の糞よりも高いことが明らかになった.特に,ビントゥル地域では,比較的高い炭素同位体比をもつマングローブ林などで採餌している可能性が示唆された.アナツバメがどのような植生環境で何を採餌しているのかについては,これまでほとんど報告がなく,鳥の生態環境を保全するための方策についても全く考えられてこなかったといってよい.本研究は,この状況を打破するための非常に基本的かつ実践的な情報を得ることができたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の第一としてあげた,アナツバメの餌生物の同定と採餌環境の推定に関しては順調に進展しているが,結果の解釈の妥当性をより高い精度で分析する必要があると考える.目的の第二としてあげた,アナツバメの個体群パラメータに関しては,鳥を捕獲することによる巣生産への影響が甚大であることを考慮し,計画を変更する必要があった.そのため巣の生産量を個体群特性の指標とするため,ツバメハウスのオーナーへの聞き取りを続けている.
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Strategy for Future Research Activity |
実験結果の解釈が正しいかどうかには十分なデータが必要であるため,今後も続けて地域の植物・昆虫のサンプリングなどを含め,より精度の高い分析を行う.特に,炭素・窒素だけでなく硫黄など異なる元素を用いた分析も新たに加える予定にしている.その結果に基づいて,論文発表を行う.
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Research Products
(5 results)