2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22710252
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 和久 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (40420434)
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Keywords | コレラ / Vibrio cholerae / タイ |
Research Abstract |
前年度の成果では、コレラ流行制御のモデル地域に指定したPhop Phra郡では毎年同じPulsed-Field Gel Electrophoresis (PFGE)型及びMultilocus Variable-Number Tandem-RepeatAnalysis(肌VA)型を持つコレラ菌Ol稲葉型株によって流行が引き起こされている事を明らかにした(一方で隣郡や他の地域では異なる)。そこで、Phop Phra郡は固有の感染源が存在する可能性を考え、本年度は同地域のコレラ多発集落の住人及び環境から定期的に検体を採取し、LAMP,法等を用いた感染源の検索に努め、数箇所の地点でコレラ菌の汚染を認めたので現地保健所に通報した。これにより次亜塩素酸カルシウムなどの散布と共に不潔な水路の埋め立てが当該職員によりなされた。この様な対応の成果か、本年度はモデル地域でコレラ流行は発生しなかった。 タイにおけるコレラの現状についてはInfectious Agents Surveillance Report(国立感染症研究所発行)に公表した。また、タイで分離したコレラ菌株は分子疫学的解析を実施し、その解析結果が国際誌PLoS Oneに受理された。本成果は2007年から2010年までにタイ北部、北東部、中部、南部のコレラ発生地域から分離・収集した343株のコレラ菌の比較解析を行ったものであるが、タイのコレラ菌も他国のコレラ菌と同様に古典型のコレラ毒素遺伝子を保有している非定型EI Torであること、リボタイピング及びPFGE解析から過去インドで優勢に認められたコレラ菌株と深い関連性をもつこと、このタイプのコレラ菌は最近タイへ入りこみ拡散したこと、MLVAは超高感度な遺伝学的タイピングの手段として極めて有用であること等を報告した。特に重要な成果としてタイにおけるコレラの流行は特定の肌VA型を持つコレラ菌01群が出現、年余にわたる停留、あるいは時間経過とともに消失している現象を捉えたことである。これらの成果は、コレラ流行の阻止・防止のための一助となりえる。また500株以上の分離株のうち、極わずかな株が新奇なコレラ菌株であることを見出した。
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