2011 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおけるムスリム女性のネットワーキングとジェンダーの現代的諸相
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22710256
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡邉 暁子 東洋大学, 社会学部, 助教 (70553684)
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Keywords | フィリピン / ムスリム / 女性 / ネットワーキング / 宗教活動 / タァリム / 布教の旅 |
Research Abstract |
本年度は、マニラのムスリム・コミュニティにおける女性の宗教活動に着目し、夏期にフィリピンで調査を行った。ここでは、タァリムとよばれるイスラーム勉強会に参加し、参加の動機、背景、民族、信仰行為の実践などに対して聞き取りを行った。 インド発祥のタブリーグは、イスラーム改革復興運動の布教組織である。もっぱら男性の活動としてみられているが、女性の活動もあり、ハディースを使った勉強会(タァリム)の活動が主である。マニラのムスリム・コミュニティにて活動が開始されたのは2002年ごろからである。毎週日曜日の午前8時から11時まで数十名の女性が集まり、ハディースの内容を諳んじたり、男性のイスラーム知識人の説教を敷居越しに聴いたりする。男性と同様に、経済的な余裕のある者はクルジ(布教の旅)に赴き、寝床を提供してくれるタブリーグ女性の家で眠る。クルジは5人以上で行動することが定められており、共に寝食することで仲間との付き合いが深まり、家族や親族より親密な関係を築いていく。タァリムにおける女性たちのネットワーキングは民族に立脚せず、参加者の民族属性多岐に渡ることがこれまでの調査でわかった。ここでは、親族や同郷、民族集団というよりも、同じタァリム参加者としての絆がつくられている。その主たる要因は、タァリムへの没入度が高い人ほど、服装が保守的なものへと変化していくからであるようだ。こうした女性たちの活動を、ムスリム集住区にいる人たちはどのようにみているのかというと、「裕福であればしてみたい」という意見もあるが、「サウジアラビアの格好を真似ているだけ」「(タブリーグの)夫に従順なだけ」と否定的なものが多い。しかしながら、参加者は増えているという。今後、何が女性たちをひきつけるのかといった点を明らかにすべく、調査を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2月から3月にかけて、他の科学研究費補助金および本研究費によって湾岸諸国で調査を行った。そのため、当初予定していたシンガポールでの学術的交流がなくなった。代わりに、湾岸諸国におけるフィリピン・ムスリムのネットワーキングに関する新たな視座を得ることができたり、現地での東南アジア研究や移動研究を行う学者との学術的交流を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が最終年度であるため、3つの柱の内の最後の調査計画を行う。現在投稿中のものが2本あるが、成果があまり出ていないため、早いうちに投稿論文を仕上げる。
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