2011 Fiscal Year Annual Research Report
「本土防衛・本土決戦」をめぐる戦跡の研究―沖縄、済州島、松代を横断する戦争の記憶
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22710257
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 毅 早稲田大学, アジア研究機構, 研究員 (00454116)
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Keywords | 戦跡 / 戦争の記憶 / 沖縄 / 済州島 / 松代 / 本土防衛 / 本土決戦 |
Research Abstract |
本研究課題は、「本土防衛・本上決戦」の拠点となった沖縄、済州島、松代の戦跡をフィールドとして、死者や暴力の記憶がどのように想起・忘却され、人びとの間で語られ、記念碑や儀礼を通して表象され、地域の中で(非)共有化されてきたのかを検証しようとするものである。 本年度のフィールド調査の概要は、主に以下の通りである。(1)平成23年4月上旬に済州島にて現地調査を行った。具体的な調査項目としては、島内各地に分布する旧日本軍関連の遺構(戦跡)・平和博物館の調査、済州四・三事件関連の遺構・記念碑(刻銘碑)・記念館・平和公園などの調査、四・三事件関連の祭祀(クッ)や追悼行事の参与観察などが挙げられる。なお、同年9月に予定していた済州島での国際シンポジウム報告と現地調査については、同シンポジウムが中止になったため計画通りに行えなかった。(2)平成23年6月と平成24年3月に沖縄にて現地調査を実施した。具体的な調査項目としては、元日本兵による慰霊実践の同行調査、集落単位での慰霊祭の調査、ボランティア団体を主体とした遺骨収集の調査、戦跡・基地ガイドの参与観察、民間巫者による慰霊実践に関する聞き取りなどが挙げられる。 本年度は、調査地の事情等により、すべての現地調査を予定通りに遂行しえなかったが、韓国語の一次資料を中心として、多くの重要な資料を収集できたことの成果は大きかった。以上の調査研究を通して、東アジア地域における戦争、植民地、占領、戦後処理などの記憶の相関性・連続性を明らかにするための基軸となる知見を得ることができた。 なお、平成23年度の研究成果としては、別欄に列挙した学会発表や講演の他に、「遺骨から『日本兵』を問う(上)(下)」(『琉球新報』平成23年6月20日・21日付)、「私の沖縄戦『体験』3」(『沖縄タイムス』同年6月22日付)などの新聞論説がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年9月に予定していた済州島での国際シンポジウム報告については、同シンポジウムが中止になったため計画通りに行えなかった。平成24年3月下旬に予定していた済州島現地調査については、早稲田大学にて開催された沖縄国際シンポジウムの日程と重なったため遂行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、平成23年度に遂行できなかった済州島のフィールド調査に関して、平成24年9月に重点的に実施する予定である。長野県松代における現地調査については、本年度は3月に実施することになったが、年度末会計に混乱を来すおそれがあったので、科研費での支出を控えることにした。平成24年度では、フィールド調査を平成24年中に遂行して、年度末にかからないように配慮する予定である。
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