2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦後社会におけるジェンダー・セクシュアリティ秩序の形成と新たな親密性の構築
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22710263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤枝 香奈子 京都大学, 文学研究科, 特定助教 (00536576)
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / 同性愛 / レズビアン / フィンランド |
Research Abstract |
本研究は、近代西欧に由来する「同性愛」という知が、非西欧社会における同性同士の親密な関係にいかなる影響を及ぼしたか、とくに「レズビアン」などと呼ばれてきた女性同士の親密な関係に注目し、近現代社会を支えたジェンダー・セクシュアリティ秩序の生成と、その過程で生み出されてきた、従来の家族とは異なる新たな親密性について考察することを目的とする。その際、日本とフィンランドという、女性同性愛に対し異なる抑圧形態をもった二つの国を比較し、近代的性規範を構成する多様で矛盾に満ちた要素を浮かび上がらせながら、新たな親密性が生み出される社会的条件や政治的力学について検証する。 平成22年度は歴史資料をもとに、異性愛の規範化と表裏一体として起こった同性愛批判のプロセスを考察するため、日本においては断続的に、またフィンランドについては夏期に現地に滞在し、関連資料を収集した。日本については、国立国会図書館等で、戦後の同性愛にかんする新聞・雑誌記事、エッセイ等を収集した。資料調査の結果、日本のマスメディアでは1970年代以降、男性的なレズビアンが不可視化されていき、(女性的な)女性同士のセックスのみに注目する記事が大半になっていったことが明らかになった。フィンランドでは、同性愛の罪で起訴された女性の裁判記録およびそれらの裁判にかんする新聞・雑誌記事を収集、翻訳の予定であったが、これらについてはすでに当地の研究者が収集・調査を進めていることが判明したため、主に、同性婚/同性間パートナーシップ法に関連する資料をフィンランド国立図書館等で収集した。その結果、フィンランドでは国家が率先して同性婚の導入を検討していること、しかしそれは必ずしも当事者の要望を反映したものではないことが明らかになった。 これらの調査から得られた成果をもとに、2010年10月にはオランダのライデンで、日本における女性同士の親密な関係の分節化を論じる研究報告を行った。また2011年2月には、これまでの研究の集大成となる単著を刊行した。
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