2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境倫理学的視点からの自律の概念の構築に関する研究
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22720004
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
豊田 光世 兵庫県立大学, 環境人間学部, 講師 (00569650)
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Keywords | 自律性 / 環境倫理 / 意思決定 / 合意形成 / 市民参加 / 環境保全 |
Research Abstract |
今年度は「地域の環境保全を進めていく自律的な主体の形成」について、文献調査と事例調査をもとに研究を進めた。事例調査では、新潟県佐渡市を主なフィールドとして、水辺再生や棚田保全に向けた協働のしくみのマネジメントに参画し、現場での経験を通して得られた知見と、資源管理や主体形成にかかわる理論を重ね合わせながら考察を行った。今年度の成果は、「多様な人びとが共に考えるための開かれたプラットホームを構築する意義」「持続可能性に向けた多角的議論を展開するうえでの子どもの参画の重要性」並びに「外部者との交流を通して地域環境の価値を発掘する拠点形成の意味」を示したことである。 環境保全を地域が主体となって進めていくには、多様な主体の協働を可能にするしくみづくりとともに、地元住民が保全の意義を実感し活動意欲をもつことが重要である。ただし、「協働を具体化するための適切なしくみがない」「身近な環境の価値を認識するのが困難である」あるいは「功利主義的な議論が主流となりそれ以外の視点からの議論が展開しづらい」などの課題が保全の現場では見られる。特に過疎化が深刻な中山間地域では、持続可能な環境保全へとつなげるうえで、地域資源をより公共的な「コモンズ(共有資源)」として認識できるようにし、保全の責任と負担を多くの人と共有することが必須である。本研究では、こうした課題への対応について、実践を通して効果を確認しながら考察を進め、上記三つの視点から成果を示した。 本研究で進めている環境保全の活動を基盤とした環境倫理の研究は、実践的な成果をもとに理論を構築している。環境保全の推進では実践へとつながる理論が重要となるため、本研究のようなアプローチ(practical philosophy)は、国外の研究者からも高い評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の予定通り進行している。今までの文献研究、事例研究をもとに成果をまとめ、査読論文として発表することができた。交付申請時に計画した学会発表の他、招待講演で資源管理の責任についての課題と、協働のためのプラットホーム形成について発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、文献調査、事例調査、疑念分析という三つのアプローチを軸に研究を進めていく。最終年度であるため、国内外研究者との意見交換を行い、成果発表につなげていきたい。事例調査では、新潟県佐渡市の環境保全事業を中心に調査を行ってきたが、今後は東京都杉並区善福寺川の再生や大阪府寝屋川市寝屋川再生事業などについても調査を行い、佐渡市での事例との比較を進める。
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