2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720005
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
西村 正秀 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20452229)
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Keywords | 哲学 |
Research Abstract |
平成22年度は「知覚状態(知覚経験)が持つ表象内容とは何か」という課題に取り組んだ。研究実施計画では選言主義の批判も視野に入れていたが、選言主義に関しては既に説得力のある批判が提出されていたため、志向説の詳細な検討に焦点を合わせた。志向説とは知覚経験を命題的態度の一種と見なす立場であり、知覚経験の説明として現在最も有力な理論の一つである。志向説は「知覚経験の単称性」と呼ばれる特徴(真正な知覚では知覚経験は知覚の個別的対象によって(部分的に)個別化されているという特徴)をいかに説明するかに応じて、「単称志向説」と「一般志向説」に二分される。本研究では、最初に近年一般志向説を擁護しているアダム・ポーツの議論を退け、その上で単称志向説を三種類に分類し、その中から「バージ的単称志向説」を擁護した。これはタイラー・バージが提出した多重内容説を基にした立場であり、個別的対象を表象する要素はフレーゲ的意義と同一視される。ただし、この立場では幻覚の内容も指示詞的要素タイプを含み、いわゆる「ギャッピー内容」にはならない。以上の成果は、1.志向説の更なる分節化を与え、2.知覚内容において単称知覚指示を担う部分の本性を明らかにしたという意義を有する。 以上の研究は、2011年3月初めにイリノイ大学シカゴ校のデイヴィッド・ヒルバート教授とコリン・クレイン教授との研究打ち合わせを通じて推敲し、「知覚経験の単称内容」というタイトルで同年3月19日に京都科学哲学コロキアム例会で口頭発表した。なお、同内容を基にして、2012年2月に行われるAmerican Philosophical Association, Central Division年次大会の口頭発表に応募する予定なので(2011年6月1日提出期限)、この研究成果は論文としてはまだ発表していない。
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