2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720005
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
西村 正秀 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20452229)
|
Keywords | 哲学 |
Research Abstract |
本年度は、「研究の目的」で挙げた、(1)知覚状態が持つ表象内容とは何か、(2)現在の情報論的表象理論の検討と適用、(3)知覚の現象的性格は単称知覚指示に寄与するのか、という三つの課題のうち(2)と(3)に取り組んだ。(2)については、M.UsherやC.Eliasmithが展開する「相互情報量理論」を擁護した(新しい情報論的表象理論には他に反事実的条件的理論もあるが、こちらには既に批判が提出されていたので相互情報量理論に焦点を合わせた)。相互情報量理論とは、従来の情報論的表象理論に統計学を組み合わせることによって,従来の理論が伴う「誤表象問題」を解消する試みである。この理論には、「表象の非対称性を説明できない」、「知覚における認識的条件を恣意的に排除している」という二つの批判が存在するが、本研究ではこれらの批判が回避できることを示した。この結論は、本理論が知覚表象の自然主義的説明として有望であることを示している。(3)については、知覚指示の認識には意識を伴う視覚的注意が必要であると論じたJ.Campbellの議論を批判的に考察し、彼の議論が失敗していることを示した。この結論は、「少なくとも知覚指示では知覚経験の現象的性格は原理的に必要とされない」という見解を支持する。 また、以上の研究に加え、前年度に実施した上記(1)の研究成果を、2012年1月の信州大学における研究会ならびに同年2月のAmerican Philosophical Association, Central Divisionの年次大会で発表した。
|