2010 Fiscal Year Annual Research Report
「幸福論」としてのアリストテレス倫理学の統一的研究
Project/Area Number |
22720008
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 直人 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00379330)
|
Keywords | 西洋倫理学 / アリストテレス / 幸福 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスにおける一連の倫理学的探究を「幸福(eudaimonia)論の諸相」として統一的に捉えつつ、理論としての幸福論、およびそのもとでの個別理論の内実と意義を探るものである。この主旨のもと、本年度はまず、(1)理論としての幸福論の内実と意義を探る上での基礎的作業として、幸福の定義およびアレテー論において中核的な概念の一つである「魂の部分」という知見について、倫理学著作における魂部分論の内実理解の明晰化、および魂論の本来的場面である『デ・アニマ』における魂部分論との異同の探究を中心に、研究を遂行した。その際、倫理学における魂部分論が『デ・アニマ』における階層的魂部分論とは異なる独自の営みであるとの近年の解釈に対する応答も試みた。その結果、前者において提示される二分法的魂部分論は後者における階層的魂部分論と齟齬をきたすものではないことを明らかにした。また、前者における部分論も、「二分法的」というレッテルはあくまで一面的なものであり、そこで展開される部分論は総じて後者における階層的部分論を理論的基礎として展開されている、との知見を提示した。次に、(2)個別理論研究については、主要な性格的アレテーである「勇気」と「節制」について、テクストの精読とそれらが中庸である仕方に関する図式的整理を遂行した。さらに、(3)アリストテレス哲学の鍵概念であるデュナミス/エネルゲイア論に関する近年の主要研究書であるJ.Beere著Doing and Beingについて書評を行った。
|