2012 Fiscal Year Annual Research Report
「幸福論」としてのアリストテレス倫理学の統一的研究
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22720008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 直人 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00379330)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | アリストテレス / 幸福 |
Research Abstract |
研究機関の最終年度である本年度は、前年度に引き続き、1)理論としての幸福論の内実解明と、2)幸福概念を鍵としたアリストテレス倫理学各論の研究という二つの柱を並行的かつ相補的に遂行した。それによりもたらされた研究成果のうち主要なものを以下に列挙する。 a)アリストテレスの愛(philia)論において導入される、三種の愛(徳故の愛、有益性故の愛、快故の愛)の帰一性の議論に関して、それらがなぜどのように帰一的関係にあるのかという解釈上の難問を考察した。それにより、諸愛の帰一性における鍵概念が「幸福(eudaimonia)」であること、そしてそのように解すことで、諸愛の帰一的関係が図式的に妥当性を保持し、かつアリストテレス倫理学全体との整合性を保持することを合理的に確認できる、との知見を提示した。 b)アリストテレスの「徳倫理」の基本的特徴を、応用倫理学の文脈を踏まえながら考察した。それにより、彼自身の立場は行為中心主義と徳中心主義の中間に位置すること、彼独自のケーススタディアプローチを提示していること、帰一性を核とする彼の幸福論が倫理学的営みの多様性を緩やかに統一する機能を果たしうること、などを示した。 c)徳論および幸福論をめぐる基礎概念である「魂」について、それを主題的に論じた『デ・アニマ』の心(魂)身論を質料形相論の枠組みに照らして考察した。それにより、アリストテレス魂論・心身論には、質料・形相と結合実体の不可分性を強調する非二元論的方向性と、それらの分節を強調する非一元論的方向性が両存していること、そしてそれは質料形相論一般に見出される併存の一つのかつ核心的な具体的場面である、ということを示した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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