2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル哲学のプラグマティズム的解釈についての研究
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22720015
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 准教授 (80513374)
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Keywords | 哲学 / ヘーゲル / プラグマティズム / ハーバーマス / ブランダム / 語用論 / 意味論 |
Research Abstract |
平成23年度は、言語の意味の社会性と歴史性という点についてR・ブランダムMaking It Explicit (Brandom 1994)第1章および第8章の検討を中心に行った。そこで、規範的プラグマティズムは以下のように展開される。1. カントの超越論哲学を言語使用の規則を明らかにしたものとして規範的に理解する、2. しかし、規則のこうした超越論的基礎付けは、規則適用の規則を必要とすることによって、無限後退を引き起こす、3. しかし、言語の実際の使用から規範を導出することにはGerrymandering問題を帰結する、4. 2と3のアポリアを回避するために、改変されたデネットのスタンス・スタンスが採用される。ブランダムのこうした規範的プラグマティズムは、同時に合理性の社会的な把握を含むものである。ブランダムは実際、Tales of Mighty Dead(Brandom 2002)において、社会的な合理性が歴史的合理性に展開することを明らかにしており、より強い意味でのヘーゲル主義を分析哲学にもたらそうとしている(大河内2012)。 さらに、J・ハーバーマスのVon Kant zu Hegel. Zu Robert Brandoms Sprachpragmatik(Habemas 1999)の検討を通じて次のことを明らかにした。5.ブランダムのI-Thou関係を基礎とする語用論理解に対するハーバーマスの批判は一定の妥当性を持つものといえるが、これはブランダムの語用論をむしろI-We関係へと拡張することで乗り越え可能であること、6.ブランダムの実在論的想定に対する批判は、本人が想定していない強い実在論をブランダムに帰するものであり、妥当しないこと。 以上のような本研究の意義は、1.ブランダムによるプラグマティズムが、カントからヘーゲルへという哲学史的展開についての理解に基づいていることを示したこと、さらにこれによって、2.分析(哲学)的合理性が、ヘーゲル的な歴史的合理性理解へと展開しなければならないことが示されたこと、3.このようなヘーゲル主義が、ハーバーマスの批判を惹起したが、ハーバーマスの批判がブランダムの理論の誤解に基づいていること、を明らかにした点にある.
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