2010 Fiscal Year Annual Research Report
インド密教流派形成史におけるマンダラ儀礼の綜合的研究
Project/Area Number |
22720022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊谷 竜太 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教 (50526671)
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Keywords | インド密教 / マンダラ儀礼 / 『四百五十頌』 / ジュニャーナパーダ / ディーパンカラバドラ / プラティシュター / 『ヴァジュラーヴァリー』 / アバヤーカラググプタ |
Research Abstract |
サンスクリット写本ならびにチベット語資料によって伝えられるインド密教諸文献を収集・精査し,『秘密集会タントラ』Guhyasamajatantraを中心とするタントラ儀礼の伝承・形成過程を明らかにする。同タントラを奉ずる諸流派の中でも最古層と看做されるジュニャーナパーダ流の典籍を中心に扱う。特にディーパンカラバドラ(Dipankarabhadra)の『秘密集会マンダラ儀軌「四百五十頌」(Guhyasamajamandalavidhi-Sardhatrisatika)』の解読を通して,プラティシュター(尊像奉納)儀礼などのマンダラ儀礼及び,儀礼に関連する教理内容の解析を行う。インド・チベット文化圏に残された遺跡・寺院に関して,過去に蓄積されてきた考古学,図像学,建築学的研究を必要に応じ文献資料と随時対照させることによって,マンダラ儀軌が備える様々な役割について多角的に考察し,インド密教教理の更なる解明を目指す。 現在『四百五十頌』の内容構成と伝承過程について,解析・校訂作業を進めている。ラトナーカラシャーンティとヴィタパーダによる二つの『四百五十頌』注,アバヤーカラググプタの『ヴァジュラーヴァリー』,プトゥン,ツォンカパの著作をも随時参照し,より精密な校訂作業を目指す。プラティシュター儀礼とマンダラ観想法との関係性を探るために,ジュニャーナパーダの生起次第である『普賢成就法』・『四支成就法普賢母』,さらに,両書に対するシュリーパラヴァジュラ,サマンタバドラ,タガナ,ヴィタパーダ各注をも随時参照し,生起次第とプラティシュター解析を進めている。その過程で,これらの四注がいずれも『四百五十頌』の強い影響力を受けたことが明らかになってきた。また,『四支成就法普賢母』を構成する各偈の正しい配列と欠損した部分がいずれもヴィタパーダ注より復元し得ることも明らかになった。
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Research Products
(5 results)