2010 Fiscal Year Annual Research Report
ライシテ(非宗教性)の再定式化のために――フランス、ケベック、日本を事例として
Project/Area Number |
22720029
|
Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
伊達 聖伸 東北福祉大学, 総合福祉学部, 講師 (90550004)
|
Keywords | 宗教学 / ライシテ(非宗教性) / 政教分離 / 世俗主義 / フランス:ケベック:日本 |
Research Abstract |
本研究は、近代の政教関係を再検討し、ライシテをこれからの社会の共生の原理として再構成するための基礎をなすもので、フランスのライシテの批判的見直しと、ライシテの脱フランス化を、2つの大きな柱としている。 1点目について、本年度で特筆すべきは、19世紀のライシテを宗教性の観点から読みなおすという数年前から行なっている研究を、一書にまとめあげたことである。また、政治哲学の視点を交えながら、19世紀フランスにおいてプロテスタント系の思想家が果たした役割についての論考を脱稿したり、フランスにおける諸宗教の歴史をとらえかえす作業を行なったりしている(具体的な成果は次年度以降に発表予定)。 2点目について、本年度は、ケベックのライシテに関する研究を進展させ、フランスとの比較検討のなかでライシテを比較文明的にとらえる視点を磨くことができた。その成果は、論文「2つのライシテ-スタジ委員会報告書とブシャール=テイラー委員会報告書を読む」(『宗教法』第29号)や、「多面体としてのライシテ-政教関係の国際比較のために」(『日仏社会学会年報』第20号)によく表われている。また、ケベックのライシテのなかでも、学校で行なわれている「倫理・宗教文化」教育についての研究を進めた。とりわけ、「ケベックにおける『倫理・宗教文化』教育とライシテ」(『ケベック研究』第2号)を発表し、トロントで行なわれた国際宗教学・宗教史会議では、パネル「カナダにおける宗教教育」で、「倫理・宗教文化」という新設科目の教科書分析を軸とする発表を行なった。
|