2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720032
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
井柳 美紀 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50420055)
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Keywords | 思想史 / 政治思想史 / フランス政治思想史 |
Research Abstract |
本研究では、近代ヨーロッパにおける未開イメージをめぐる叙述を通して、ヨーロッパにおける中心と周縁、文明と未開、ヨーロッパと非ヨーロッパをめぐる思想史の系譜を辿り、ヨーロッパ思想史が知の周縁としてのマイノリティといかに向き合ったのか、植民地史の関連も念頭におきつつ、その一端を考察するものである。そこで、本研究では、16世紀以来のいわゆる地理的拡大による「未開」地域の「発見」から出発し、特に「文明社会」論が活発に論じられる18世紀啓蒙思想に焦点をあて、分析を行うこととする。(a)まず、本研究の出発点となる研究として、ヨーロッパによる未開社会の「発見」から出発し、モンテーニュやラオンタンらのヨーロッパ文明社会を批判して未開社会を称揚するいわゆる<高貴な未開人>に関する言説を分析し、その上で、ヴォルテール、ルソー、ディドロの3人が、未開社会をどう論じたか、3者の比較検討をしつつ考察し、その成果を『政治思想研究』に論文として公表した。(b)また、本研究は、ヨーロッパ社会の未開イメージを通して、ヨーロッパの他者意識やマイノリティ認識などに迫ろうとするものだが、その土台となる多様性や差異をめぐる思想史を、啓蒙の世紀において知の周縁にも目を向けた思想家としてのディドロに着目し、その自然観・美学観・政治観の観点から扱った著作として『ディドロ 多様性の政治学』を公刊した。(c)これらを踏まえ、植民地問題との関連性などについても検討している。
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Research Products
(2 results)