2011 Fiscal Year Annual Research Report
「反・明治維新」感情の系譜学:同時代から今日に至る思想とメディア
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22720035
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
與那覇 潤 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (50468237)
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Keywords | 日本史 / 思想史 / メディア史 / メタヒストリー / グローバルヒストリー / 琉球・沖縄 / 明治維新 / 中国化 |
Research Abstract |
研究年度2年目である本年度は、本研究のバックボーンとなる歴史観を江湖に問う単著『中国化する日本-日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春-秋、2011年11月)を公刊することができた。同書では内藤湖南、宮崎市定、網野善彦、速水融ら史学史上に残る歴史家たちの歴史観を、「中国化」と「江戸時代化」という二つの理念型の下に一本に束ねなおすことで、「多くの一般庶民にとって、明治維新とは実は『西洋化の衣を纏った中国化(郡県化)』であったに過ぎず、そのために江戸時代的(封建的)な安定した秩序に郷愁を感じる日本人は、近代以降も『反・明治維新』感情に基づく江戸時代への郷愁を紡ぎ、時として現実にも政治・経済体制の『再江戸時代化』(コーポラティズム化)を行ってきた」とする、議論の前提を学術界はもとより、広く社会に訴えることができたと考える。実際、本年度内に限っても『朝日新聞』(2月1日)・『Voice』(3月号)・『週刊東洋経済』(2月18日号)等の取材や、NHK(Eテレ、3月31日)・CS(3月8日)への出演、民間企業での講演(3月12日)など、多くの反響があった。 同書以外には、琉球処分を素材にしつつも、上記の視角をより広く世界史に開こうとした論文「世界史からみた琉球処分」-『近代』の定義をまじめに考える」(三谷博・村井章介編『琉球からみた世界史』山川出版社、2011年6月)の刊行や、明治維新と辛亥革命の対照を視野に入れつつ、東アジア近代史学会・福岡ユネスコ協会共催学術シンポジウム「辛亥革命と東アジア」(2011年10月30日)で行った講演などが大きな成果であろう。その他、細かな文章の公刊や各種研究会での発表を多数行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述/下記の研究成果のほか、狭義の「論文」や「学会」には当たらないため記入していないものの、学術雑誌での書評1点、それ以外での書評1点、エッセイ2点、研究会発表5回、講演会3回を行っており、いずれも本研究に接続する内容である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本研究の理論的バックボーンたる「中国化」という観点に基づく新たな日本史像を、各種の場や媒体で発信し続けると同時に、今後はより具体的なテキストに則した読解と分析を進めてゆく。具体的には、戦前の論者では内藤湖南、戦後では山本七平の言説における「中国化」と「明治維新」との関連を追及してゆくつもりである。
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Research Products
(4 results)